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このページの項目

1 欠陥擁壁について


2 どのような要因で欠陥擁壁が発生するのか?    

3 擁壁工事の第三者監理業務とその必要性について
 

4 ダイヤ設計の監理の内容について






1 欠陥擁壁について

  
姉歯構造計算書の偽装事件以来、工作物のうち「欠陥建物」については、遅まきながら再発防止の為の法整備により瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成十九年五月三十日法律第六十六号))が制定され、十分ではありませんがある程度の<欠陥建物>の発生に歯止めはかかりました。

一方、同じ構造物であり、建物を支える工作物である擁壁については、その要求性能を担保する法整備は未だなされておりません。欠陥擁壁による<耐苛力>や<要求性能の低下>は欠陥建物のそれと比べてより大きな修復コストとなる可能性があります。
建物のように、リスクマネージメントとしての定型の<火災保険>や<地震保険>も存在しておりません。個別的に保険会社との特約契約しかなさそうです。しかし保険外社にとって建物のような、標準化された危険頻度データーがない擁壁のような工作物は、保険会社が引き受けるか否かがポイントになるでしょう。

不幸にも既存擁壁のやり直し再構築となるケースであっても、費用対効果の視点からすれば、擁壁の再構築を断念せざるを得ない土地も多数存在します。この様な土地は<死に地>として、建付地として利用されず放置されております。
このような<死に地>にならないためにも、安全、安心な擁壁作りあたり、建物と同様な配慮がなされる必要があります。


しかし、擁壁の安全性は建物の安全性よりも、一般的に認識されない傾向にあります。
その大きな理由の一つとして、建築物と異なり工作物である擁壁は、その構築後においてはその主要部分が地中に埋設され、住み手側や利用者にとって、建物のように視覚的に確認がし難い事に有ります。


  
2 どのような要因で欠陥擁壁が発生するのか?


欠陥擁壁の発生原因となる要因や欠陥による変状の形態を、実務の立場から少し述べてみます。
現実の劣化による欠陥発生は下記に述べる要因が複数重複して欠陥擁壁となり、基本的性能低下や崩壊に至る欠陥擁壁になりことになります。


欠陥の発生の分類について

2-1 目視(色)や(音)からでも簡単に分かる欠陥

@擁壁の正面に白い粉状のものがみられる場合
  →白華(エフロエセンス)コンクリート内部のカルシウム分の溶出。

A擁壁表面が茶色に発色
  →内部鉄筋が錆びている。

Bコンクリートの打音

  →キンキンと澄んだ音(異常なし)。
  →ボコボコ音(浮き、剥離、空洞やジャンカ可 能性)。

C擁壁全体の傾き

  →支持地盤の耐力不足、地表面加重の増大。

D孕み
  →鉄筋量の不足、コンクリートの経年劣化

E発生しているひび割れの形態、方向、幅等でも劣化状況がある程度判定できます。


専門家でなくても、このように欠陥擁壁の判断は可能ですが、その欠陥となった劣化の原因の判定は専門的な判断が必要となります。例えば、ある人が欠陥人間であることの判断は通常人でも可能ですが、その人間が何故そうなったかの原因を判定することは、専門家である精神分析医の判断が必要になることと似ています。

2-2 初期欠陥

@設計上の欠陥
・構造計画の不適切によるもの。
・具体的構造計算のミス。 
・裏込め土の<内部摩擦角>の過大評価によるもの。

A施工上の欠陥
・打設コンクリート強度の不足。
・使用鉄筋量の不足(手抜きや、うっかりミスによるもの)。
・ジャンカ、コールドジョイント等による施工能力不足によるもの。

B断面の強度不足によるもの。
・施工中のコンクリートの凍結事故(寒中コンクリート対策不足)。
・鉄筋のかぶり不足による、鉄筋に沿ったひび割れの発生。

2-3 地盤の欠陥

@初期地盤の欠陥
・計画擁壁の必要地盤地耐力以下の土地に施工した。

A地盤変動によるもの
・擁壁完成後において、なんらかの原因で擁壁の支持地盤が変動して、擁壁自体に変状が発生したもの。

2-4 完成後の使用原因による欠陥

@積載加重の変動

たとえば擁壁計画時において、当初は擁壁上の計画建物を木造2階建程度で計画設計したにも係わらず、鉄筋の建物に立替建築をしたような場合。
(この場合、建物の積載加重は約3倍程度増加することになる。)

A擁壁つま先部位の掘削によるもの
昔はよくあったのですが、擁壁の下側の土地所有者が、たまたま擁壁つま先部分の土地を平らにする為に隣地既存擁壁の足元を掘削してしまい、前面擁壁の土圧が不足して、既存擁壁が傾くような変状が起きる場合があります。

B想定外の地下水の変状に起因するもの
・通常擁壁は擁壁背面の土圧(主働土圧)に抵抗出来るように計画します。従って、水抜き穴や排水溝、裏込砂利等の工事が完全に施工されない欠陥擁壁の場合、擁壁裏側の水位が上昇しこの水圧も擁壁に加わることになります。
又水分それ自体も擁壁の裏の土の流動性を高めることから、土の<内部摩擦角>を小さくし、ますます擁壁に土圧と水圧の加算された圧力が加わことになり、擁壁が傾いたり、崩壊に至ることがあります。

2-5 大地震によるもの

地上に建築された建物と比較して、地中に地盤と一体として構築されている擁壁は、地震力による影響を想定し計画してあれば、それほど地震に弱い構造物であるとはいえません。 
8m以下の小規模な擁壁の場合は、地震の影響は無視しうる程度と考えられます。しかし、擁壁自体に欠陥を内包している場合は地震により崩壊する場合があります。

2-6 自然環境によるコンクリートの劣化によるもの

@コンクリートの中性化
A<アルカリ骨材反応>によるひび割れ
B塩分による鉄筋の発錆による強度不足

これらは擁壁を構成するココンクリート自体が経年により劣化変調するものであり、適切な施工監理が必要となる分野であるといえます。


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3 擁壁工事の第三者監理業務とその必要性について


3-1 擁壁の建設場所について


擁壁工作物の特徴として、通常では擁壁の建設場所は隣地境界線付近に建築されることが多い。

一度建築された擁壁に構造的な欠陥及び経年劣化変状が発生した場合や、構造物としての寿命が到来した場合には、建物とは異なり、物理的(他人の土地を利用する必要がある。市街地内の擁壁の場合では建設機械の作業スペースがない)にも、経済的(擁壁の近くに建物が建築されている場合は、擁壁だけではなく建物事態の再建コストも見積もる必要がある)にも、再建築をすることが難しい工作物であるといえます。

補修工事や補強工事、再施工工事の場合、隣地の土地所有者の了解を得ることが出来ない場合もあります。(人間関係によるもの)
又擁壁の境界線近くに上下の敷地に建物が隣接している場合(物理的に不可能なもの)などは、その建物を解体しないと工事等が出来ない場合があり、現実的には改修工事や再施工工事等が不可能なケースもあります。

特に東京の場合は住宅が密集しており、山の手といわれる地域の目白台、小日向、西片、白金台などの比較的住宅地として熟成した高級住宅の既存擁壁の存在する箇所にはこの傾向があります。

3-2 擁壁工事の基本性能を確認することは出来ない

理由として、車や電気製品のような消費品と異なり、注文者や管理者がその擁壁の要求性能を確認することは、物理的に不可能です。
擁壁の重要な構造体部分は地中に埋没していることと、完成後において規定の性能チェックをすることは事実上、困難となります。
車とは異なり、目で見たり、運転してその性能を確認することは出来ないということです。

3-3 欠陥擁壁工事が出現する経済的要因について

前記に述べたように、性能が目に見えずしかも発注者には確認できない擁壁構造物に対し、生産者側である施工者は擁壁の施工にあたりどのような姿勢で行動するであろうか。

手間とコストを掛けて擁壁の性能向上を目指して施工しても、発注者には見られない。評価も得られない可能性がある。
そうであるなら、杜撰な手抜き工事をしても、ある程度の工事であれば発注者には判らないし、完成後すぐには施工者としての信用を失うことはない。
その為、基本的には利益優先の経済原則により利益優先行動を取ることになります。

我々は<姉歯構造偽装事件>でも学んだように、性能が確認出来ない<製造物=鉄筋=擁壁>を、規制がない自由な市場に委ねれば、資本主義経済下ではその品質が低下する、という大原則下にあるということです。

3-4 確認申請の不備

建築基準法により擁壁の高さが2mを超える場合は、行政庁(市役所建築課)に<確認申請>を提出して、擁壁の構造等の内容に付き技術的な審査を受ける必要があります。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。

擁壁の場合は建築物の確認申請とは異なり、擁壁標準図というものが存在します。これは、その地域の行政庁が出している場合(ガケの多い横浜市や川崎市の場合)や、社団法人 日本建築士事務所協会が発行している標準図などがあります。

擁壁の設計が出来ない者が確認を受ける場合、行政庁が出している擁壁の<標準断面>や日本建築士所協会が発行している<擁壁標準図>で申請をすると、計算書は必要要件とはせずにノーチェックで確認許可がおりる仕組に実務上はなっております。地盤調査をしていなくても、設計条件を満足しているかも関係無しで許可がおりてしまう場合もあります。

実務上は擁壁に詳しい設計者も、それをチェックする行政側の人間も世の中には少ないのが現実です。
そこで、双方にとり便利な<擁壁標準図>なるものが存在しているわけです。
このことは逆に言えば、標準断面等で確認を受けた擁壁は危険な擁壁が多いということにも繋がる可能性があります。

構造の知識が無い人や施工能力の無い業者でも、安易に擁壁を計画(設計)して許可を受ける事が出来るということは、なんとなくその図面を参考にして安易に施工をしてしまう危険がある、とも言え無くもありません。

3-5 建築基準法の抜け穴? 擁壁工事については、資格が定められていない

建築士法には工作物の準用規定がないため、設計に際し建築士の資格の要件はありません。
基本的には基準法の「一般構造基準等」に抵触しなければ、誰でも設計が可能ということです。
<建築物>については、基準法はその構造、用途、階数、軒高、床面積等により、設計者の資格要件を1級建築士、2級建築士、木造建築士と区別しております。

しかし<工作物>である擁壁については、その資格要件を要求しておりません。
この辺に欠陥擁壁が世に出現する遠因があるのかもしれません。
<建築物>と同様の法的な整備が必要であると考えます。

3-6 擁壁施工専門業者がいないこと


擁壁の規模にもよりますが、世の中に擁壁工事を専門にしている会社はまず少ないといえます。
小規模の擁壁工事などでは、建築土木工事業者の基礎工事をする業者や、土木専門工事の業者がその業務の一部として営業している形態などであり、擁壁工事のみに特化して擁壁工事のみを専門としている業者は少ない現実があります。
ある意味において擁壁工事は、土木工事の<片手間>仕事ともいえる工事分野の範疇と位置づけられている分野かもしれません。

3-7 擁壁設計技術者について

本来的には擁壁の設計や施工の監理や現場管理は、建築士や建築技術者の範疇ではなく土木関係技術者の範疇の分野であると考えます。何故なら、擁壁事故における崩壊や変形等の大きな変状の基本原因は、擁壁を支持する地盤に影響されます。
しかし建築士の場合、地盤やその地盤を構成する土質工学の勉強をしている人はほとんどありません。
学校でもほとんど学んでおりませんし、建築士の試験問題でもあまり出題されません。

当方は大昔、建築士の受験学校で1級建築士の受験指導を数年間した経験がありますが、土質やコンクリート工学についてはほとんどの建築士において、理解や経験不足をいなめません。
このことは、建築関係者の<コンクリートの耐久性に対する判断の欠如>につながる重大な問題と考えます。

この分野は、念ながら土木技術者が得意としている分野になります。
土木技術者の場合多くは役所や大手土木ゼネコンなどで就業しており、あまり小さな町場の施工会社には就業していないようです。
土木工学を学んで、住宅地の擁壁を専門とするような奇特な人は今後も少ないとおもいます。
このことは、建築設計事務所は世の中にゴマンとありますが、土木設計事務所はそれほど存在していないことからも明らかです。


3-8 落とし穴あり役所の検査の問題点

擁壁の高さが2mを超える場合には、市役所に確認申請の交付をうける必要があります。
そして市役所にもよりますが、その擁壁の工事が完成するまでに、2回程度の現場検査があります。建物の検査であれ、擁壁の検査であれ役所の検査はあくまでも<お役所検査>の域の範囲であります。

そもそも、市役所などの現場検査の担当者は役所でも一番若い人達で、それほど練達の士といえる技術者ではありません。
一言でいえば、申請内容に嘘がないか、隣地に越境して構築していないか、鉄筋の本数にごまかしがないか、等々程度の検査であって、個々の擁壁自体の要求性能を設計目的にまで高める為の検査や監理とは、本質的に異なるものと思ったほうが良いとおもいます。 

むしろ、こうした小規模の役所の現場確認だけの擁壁工事によって建設される擁壁に、問題点が多いという現実があります。
建築工事の場合においては、たとえ木造二階建ての建物であっても役所の検査以外に、法律で建築士による監理者を定めることが法律で義務付けられております。
しかし、擁壁工事の場合には、設計者の資格も監理者の定めも法律上では野放しの状態です。

建物を支えるものが基礎であり、その基礎とともに地盤をささえる擁壁について法的になんらの規制がないのも非常におかしな話であると思います。


  
4 ダイヤ設計の監理の内容について


擁壁工事において、その施工について監理者を定める必要性については縷々述べたつもりです。
建築物や擁壁等の工作物を安全・安心に長期間にわたり使用していく為に、完成後の維持管理の重要性については、だれでもが理解しています。
しかし、維持管理よりもコストが掛からず擁壁の要求性能を長期間保持するための効率的な方法は、施工時における初期欠陥の発現防止です。

そこで、初期欠陥の発現防止の為の具体的な擁壁監理の内容を提案してみます。
建築工事の監理とは異なり、擁壁工事には設備工事や仕上げ工事がない為、現場立会いの回数は少なくなります。又、擁壁の形式や高さによっても現場立会い回数は異なります。

○現場立会い参考例(一般的コンクリート擁壁の場合)
   
 擁壁形式   コンクリートL型擁壁
 高さ     5m程度
 杭施工    なし
 
1回目
・ベース下、根切底部分の床付地盤の確認
・栗石
・記録写真

2回目
・捨コン、型枠組み立て状況
・ベース筋 鉄筋検査

3回目
・型枠倒れ計測 
・壁筋、鉄筋検査 スペーサーブロック
・記録写真

4回目
・水向き穴施工状況
・鉄筋検査、鉄筋被り寸法 
・裏込め土埋め戻し状況確認
・記録写真

5回目
・竣工検査
 (水抜き穴、擁壁倒れ、擁壁高さ、躯体厚さ、ジャンカ、コールドジョイント、砂スジ、ブリージング)
・排水施設通水及び勾配等の確認


○監理報告書作成内容 (製本にて2部提出)

・立会い記録(計測等数値記録)
・その他所感等
・記録写真の添付
・補修工法の立案
・構造計算は別途となります。
・初期欠陥の補修方法の立案、アドバイス等。


○監理費用について (消費税は別途)

擁壁の形式、杭の施工の有無、擁壁の規模、施工現場の遠近等により費用は異なります。
30万円を標準として考えております。
事前にご相談ください。


                             以上です。


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