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技術屋の辛口コラム

欠陥地盤110番・地盤の品質判定





このページの項目


1 地盤の品質判定とは ・地盤品質判定士について

2 不同沈下トラブル(建物・擁壁の場合)

3 液状化地盤トラブル

4 軟弱地盤のトラブル

5 地盤判定の落とし穴 (建築士・構造計算担当者さんへの提案とアドバイス)





  
参考土質写真 (クリックすると大きな写真になります。)
  №1   №2   №3
   №1            №2            №3

  №4   №5   №6
   №4            №5            №6





  
1 
地盤の品質判定とは
 地盤品質判定士について



土地の分譲業者、土地の購入予定者や問題のある土地の所有者はその土地の『品質』について、専門家に『地盤の品質を評価』してもらうことは将来のトラブル発生の防止に役立ちます。


1-1 具体例


①購入したい土地の地盤の危険度を確認したい。

②現在住んでいる土地の地盤の安全性を確認したい。

③購入を予定している土地が液状化マップで危険度大となっている。どのような対策が考えられるか。

④現在住んでいる住宅の裏山が崩れて来ないか心配だがどうしたらよいか。

⑤ハウスメーカーや建売分譲業者が計画対象地を取得する場合の判断資料としての情報の為。

⑥建築訴訟における、損害賠償額算定の為の基礎資料として。

⑦隣接の既存擁壁に構造的なクラックが発生した。倒壊等の危険がある。

⑧その他地盤に関わること基礎構造、構造計画全般。

⑨地盤の補強方法の提案、アドバイス。

⑩液状化の危険のある土地に住宅を建築の予定、被害を最小限に抑えたい。

⑪既存の擁壁に新しくひび割れが発生したが、問題があるのか?。



1-2 その他、実務から見た宅地のトラブル発生例

① ミニ開発業者による分譲地の場合、不適切な擁壁工事や造成工事(主に地盤の転圧不足によるもの)に起因する地盤トラブル。

② 土地バブル期における転売目的による宅地開発。

  産業廃棄物投棄後、表面部分に表土で盛り土をしている地盤→沈下原因→擁壁変状

③ 工期短縮の為の機械化による急速な盛り土工事に起因する地盤の沈下。

④ 隣地の地盤状況を無視した施工計画による新規分譲地の場合。

⑤ 首都圏内の宅地においては、平成期に入ってはほとんど開発済みであったこと。

従ってその後の分譲地においては、宅地としてはトラブル発生の可能性のある軟弱地盤地や液状化地盤の土地において開発された土地が多かった現実があります。消費者にとってはコスト的に格安観から購入した場合があったのですが、結果的は高い買い物となったはずです。

⑥ 「軟弱地盤」と「地盤沈下」の本質的な地盤評価ミスによるもの。

欠陥地盤とは地震時(震度5以上)に液状化が発生したり、軟弱地盤であり地表近くに支持層が無く建物や擁壁が不同沈下や変形、各種の変状を引き起こす地盤といえます。

しかし不同沈下し易い地盤はありますが、『不同沈下地盤』という固有の地盤はあり得ません。何故なら建物が不同沈下をする原因には建物の構造設計の計画自体に原因がある場合が多いからです。この詳細については不同沈下の項目で説明いたします。

⑦ 隣の盛り土工事やビルの基礎工事によって、自分の土地や建物に変形、変状が発生した場合。 

このような場合にはどうしても専門家の関与が必要となります。

原因が建築にある場合→建築士
原因が地盤にある場合→地盤品質判定士(登録中)
原因がコンクリート構造体そのものにある場合は→コンクリート診断士
建物や地盤の変形量の計測には→土地家屋調査士 


などの専門資格者による意見書や<計測測定値>が有効な証拠資料等になります。
ダイヤ設計はこれらの専門資格を代表者である当方個人が有しております。

又、すべての現地調査や報告書の作成を自ら行います。従って、ある事象(トラブル)の原因究明方法についてその専門分野が多方面に渡る場合においても、包括的に対応し判断ができると考えております。



1-3 地盤品質判定士制度について。


東日本大震災をはじめこれまでの地震によって発生した住宅や宅地の被害を教訓として、公益社団法人地盤工学会を代表に一般社団法人日本建築学会・一般社団法人全国地質調査業協会連合会が発起人となり、多く住宅や宅地の関係諸団体の参画により2013年に発足しました。

建築学・土木工学分野や不動産・住宅関連産業等に従事する地盤技術者を対象に、『地盤品質判定士』の資格制度が創設されました。



               地
盤品質判定士の職能図
     地盤判定士職能図

           詳しくは地盤品質判定士協議会のHPで確認。

           https://www.jiban.or.jp/jage/hanteishi.html


この地盤品質判定士の資格制度の目的は、宅地の造成業者、不動産業者、住宅メーカー等と住宅及び宅地取得者の間に立ち、地盤の評価(品質判定)に関わる調査・試験の立案・調査結果に基づく適切な評価と対策工の提案等を行う能力を有する技術者を、社会的に明示することにあります。

上記概念を一言で表現をすれば、地盤品質判定士とはあなたの土地の地盤専門医であるホームドクターともいうべき技術者になります。

                  


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2 不同沈下トラブル(建物・擁壁の場合)


建物や擁壁が建築時より何らかの原因んで沈下する場合、同じ沈下障害でも等沈下と不同沈下の2種類の沈下形態があります。



2-1 等沈下(一体傾斜沈下)


等沈下=建物全体が水平面にたいして傾くこと無く、平行の状態で沈下する場合。 
この現象は地盤自体を概観した場合物理的には土塊は弾性体であるから、建造物の重さや載荷重により圧縮されることにより縮むことはさけられません。

(厳密には時間の経過による粘性土質の圧密による「圧密沈下」による要因よりも圧密が短期に終了する砂質地盤の「即時沈下」による現象が卓越したものといえます。)
問題はその量です。
等沈下の場合、建物の使用障害が発生しませんのである程度の量は許容されております。

又使用者も通常は建物を計測することは少ない為に気づかない場合が多いとおもいますが、建築前と建築後を比較すると必ず沈下は発生しております。そしてこの沈下量は建物の規模や重量により異なりますが、<建築構造基準>によりその許容量はある程度は認められております。



2-2 不同沈下

前記の等沈下(一体傾斜沈下を含む)はその発生原因の特定が比較的簡単な為(液状化、許容地耐力の不足)、大きなトラブルに発展することはない。

しかし、不同沈下は発生形態が複雑であり、得に建物の中央部が「V字型」に発生した場合などはその箇所に変形応力が集中し、建物の構造部材に悪影響を及ぼすことになります。発生原因がいろいろある為、また複数の原因がオーバーラップして発生する場合が一般的です。その為、調査の為のコストも割高になります。

昨今問題になった横浜のマンションの杭長の不足問題などの場合、建築後の客観的な原因解明は現実的、経済的には不可能ともいえます。
その為、施工者としては再建築という最悪な選択をせざるを得なかったとおもいます。

又、建築訴訟の関係からも6/1000以上の傾斜『品格法』が発生した場合には、瑕疵の発生としての訴訟問題となる場合があります。

このような訴訟事件の場合、民事裁判の例ですが、裁判所は専門委員を選任する場合が通例となり(2003年の民事訴訟法改正による専門員制度の創設が背景)、いわゆる「複雑訴訟」の形態となり、裁判期間も長期化するケースが多くなります。

又、当事者の主張内容を立証する為の土質試験のコストも、当事者には負担となりがちです。 
添付されている当社の事務所写真も等沈下は発生しておりますが、不同沈下は発生しておりませんので使用上の問題はありません。



2-3 建物を不同沈下させない構造設計について実務上のアドバイス。

①建物全体のプランを<偏荷重>にならないプランとする。従って2階や3階部分がセットバックしたものや、デザインを優先した計画は採用しない。

特に当方の経験から、<デザイナー建築士>の場合デザインが優先される傾向が強く、地盤や構造の知識が少ない為かトラブルとなる建物を設計する場合が少なくありません。
通常の木造3階建の住宅程度の規模の建物では建物の外形を構造的にデザイン化することは、在来工法でも2×2工法でも構造計算上はパンクします。

無理に計算をクリアーさせる為には、耐力壁を集中させる等の構造的には不安定な工法を取らざるを得ません。

②礎構造を堅固な基礎を計画する。ベタ基礎、鉄筋の増筋、基礎周辺の盤面の割り増し、修復時の基礎盤の破壊変形の防止の為<地中梁>の増設や短い地中梁の<延長>。

計画時このような基礎構造にしておけば万一不同沈下発生しても、<ジャックアップ工法>等で低コストで修復可能となる。

③軟弱地盤において杭基礎を採用する場合、特にその杭を支持杭として設計する場合には、軟弱層の沈下を考慮して<ネガティブフリクッション>による杭の軸力を割り増しして設計をしておく必要があります。

④将来隣地に隣接して建物が建築される場合を想定した、隣地建物の地盤圧の増加を見込んだ必要許容地耐力の割り増し設計をしておく必要がある。

⑤市街地の場合は建物の修復工事をするため作業スペースとして建物外壁と隣地境界線との離れを1mは確保しておくこと。

⑥パイル・ドラフト基礎の検討(2001年 建築学会)


下記のように定義されます。

直接基礎と杭基礎の中間的な基礎であること。直接基礎と支持力は確保できるが、不同沈下等が懸念される地盤では「沈下低減」の為の杭を併用して、建物荷重の一部を杭に持たせようとする新方式の工法といえます。

従来からの建築基礎構造計算では、異種の基礎形式の併用は耐力の算定基準が異なる為に特別な場合以外採用されませんでした。

しかし住宅のベタ基礎の下に4m程度の松杭を施工することは経験的にも有効であることは知られており、計算上は杭の耐力を無視して(0として)施工した例は沢山ありました。昔のお城や石垣の下にも松杭の施工がされている物もあります。

計算上はその耐力は0としても現実的には最初に基礎の耐圧盤が微小に沈下をした場合には、下部の松杭に沈下圧が伝達されて基礎盤と松杭は一体として働くはずです。パイル・ドラフト基礎の考え方に通じる「伝統工法」というべきです。


  
3 液状化地盤トラブル



3-1 液状化地盤とは

新潟市の4階建県営アパート
          №1 

          液状1


我が国で液状化が技術界と世界中に取り沙汰された、1964年に発生した新潟地震の有名な写真です。建物被害の割に人命被害はありませんでした。



3-2 浦安市の液状化

以下3枚の写真は東日本大震災発生後、千葉県浦安市で当方が撮影したものです。液状化により水よりおもいマンホールも地上から浮いてしまします。


「噴砂」の後の地盤沈下


№2
噴砂1


№3
噴砂2

№4
噴砂3




液状化終了後の地盤沈下によりマンションの敷地地盤が沈下して、地に地下の地中梁が露出しています。


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○液状化による住家被害(東日本大 震災)時の被害データー
 (国土交通省都市局調べ 2011.9.27)
 
・都県名  ・被害棟数   ・被害上位10市   ・被害棟数
 千葉県   18,674棟      千葉県浦安市    8,700棟
 茨城県   6,751棟   千葉県習志野市    3,916棟
 福島県   1,043棟     茨城県潮来市    2,400棟
 埼玉県    175棟     千葉県香取市    1,842棟
 宮城県    140棟     茨城県神栖市    1,646棟
 神奈川県    71棟     千葉県千葉市    1,190棟
 東京都     56棟   福島県いわき市    1,043棟
 岩手県     3棟     千葉県船橋市     824棟
 群馬県     1棟       千葉県旭市     757棟

  合 計 26,914棟    千葉県我孫子市     635棟



3-3 液状化の発生原因(必要3条件とは?)

注記=ここでは説明を判りやすくにする為に高層ビルや土木重量の工作物ではなく、3階建程度の住宅等の「小規模建築物」の地盤を想定して話を進めいきます。

(その理由として、ある地盤に同一震度、同一地震継続時間であって且つ同一程度の液状化が発生したとしても、<液状化による被害>そのものは建物の構造、重さ、形態等により異なることによる為です。)

具体的な目安として、対象敷地の地表から深さ5m程度(必要によりそれ以上)までの地盤の調査を行うことで判定が可能となります。

その1 地下水が存在すること。
その2 ユルイ(粘土分の少ない)砂質地盤であること。
その3 ある規模以上の地震があること。


上記の三要素のどれか1つが欠けても液状化は基本的には発生することはありません。これらのことから判ることは軟弱地盤と液状化地盤とは直接因果関係が無いということです。



3-4 その発性メカニズム

1 地震前    
   
2 地震時
 (液状化発生時)
3 発生後
被害実態


この図だけでは判りづらいので、超簡単に説明します。


1 地震前の図の説明

地盤は地下水(間隙水)に満たされてはおりますが、砂の粒子はお互いに手を繋ぎ合って環状の鎖を形成しております。ラクビーのスクラム状態です。未だ土にせん断強度(土の強さ=有効応力発揮)がある状態です。


2 地震時の図の説明

ある程度以上の地震が発生すると、砂と水が一体として激しく強請られる為にに地盤内部の間隙水が高まり、砂はその手を持ち切れずに放してしまうことになります。
(土の粒子間の接触応力の減少=有効応力の減少)

そうすると、環状の鎖(砂粒子のかみ合わせ)は外れてしまいます。そして砂の粒子は水中に浮遊した状態になります。
(砂は集団から個人になった様なもので、もはや、スクラムの団結力がなくなることになります)

この時、水の比重よりも重いマンホールやインフラ配管設備も砂と水と一体の泥水の密度(比重=1.8程度)より小さい為に浮き上がり地上に飛び出してしまいます。粘土質の地盤が液状に強い理由もこのところにあるわけです。

(粘土はその粒子のスクラム力(粘着力)が砂よりも格段に強い性質があります。)


3 地震発生後の図の説明

泥水の中の砂粒が沈降し地盤上部には間隙水が集中して、上部に集中して地上に吹き出すことになります。この現象を「噴砂」や「噴水」現象といわれております。その後地中の地盤体積は縮小し地盤は沈下することになります。



3-5 <一言コメント>

○年代効果について。

液状化に関する文書にはよく液状化地盤にランク付けをして、下記のような表が必ずみられます。

液状化判定地盤ランク



液状化の 可能性: 大の地盤(A地盤)


自然堤防縁辺部、比高の小さい自然堤防、蛇行州、旧河道、 旧池沼、砂泥質の河原、砂丘末端緩斜面、人口海浜、砂丘間 低地・堤間低地、埋立地、湧水地点、盛土地(*1)

液状化の 可能性: 中の地盤(B地盤)

デルタ型谷底平野、緩扇状地、自然堤防、後背低地、湿地、デルタ、砂州、干拓地

液状化の 可能性: 小の地盤(C地盤)

扇状地型谷底平野、扇状地、砂礫質の河原、砂礫州、砂丘、海浜


このリストで海岸は液状化しにくい地盤であり人口海岸は液状し易い地盤とランク付けされており、同じ砂質地盤であるのに少し納得しにくいところがあると思います。その理由下記の理由によります。

新潟地震の際,古町地区は同じ砂地盤であっても被害はほとんどありませんでした。信濃川沿いの埋め立てが昭和の初めに大々的に行われたのに対し、古町地区は江戸時代以前から中州であったところに江戸時代の初期(1655 年)に移転して形成されたところです。

したがって、中州が形成されてから新潟地震の発生まで少なくても 300 年以上経っていたことがわかります。こうしたことから,たとえ緩くたまった砂層でも、300 年以上経てば液状化に対する抵抗力がついてくると言えそうです。300 年というのが 1 つの目安になると 思われます。

 (国土交通省北陸地方整備局資料)

このことから上記「液状化判定地盤ランク」で同じ砂質地盤であっても、<人口海浜>は液状化しやすいAランクであり<海浜>は液状化し難いBランクとなる理由が判ります。
液状化判定地盤の難しいところです。

同様に軟弱地盤である<旧池沼>は液状化しやすいAランクであり、<扇状地>は液状化し難いBランクとなっております。この理由は、扇状地の場合は河川の堆積物で構成された地盤であり、上からの砂が体積堆積した地盤ですが、礫や砂利がかなり同時に混入された地盤である為液状し難い地盤になります。

ちなみにこの地盤は宅地としても良好な地盤として評価されます。礫や砂利質地盤は粘土分が少ない為に圧密沈下が少ないことによります。

このように液状化地盤の判定においては、地盤や土質に関する基礎的な知識がどうしても必要になると思います。

地盤は<天然の自然物>であり、<人工物>とは異なり複雑で一筋縄では掴みずらい性質であり、地質調査や土質試験結果はあくまで地盤のある一部の箇所の推定の数値に過ぎないと考えるべきです。


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4 軟弱地盤のトラブル



№9 ダイヤ設計の建物です。
外部階段に注目ください。
          ダイヤ 外階段-1

№10 ダイヤ設計 外階段写真

          ダイヤ 外階段-2

№11 ダイヤ設計 外階段写真
          ダイヤ 外階段-3






この建物(鉄骨3階建)の階段部分(写真2)をみてください。コンクリート階段の最後の一段目は建築後に敷地の地盤沈下の為(約25㎝)増設されたものです。犬走りコンクリート(写真3)も駐車場の方向に25㎝程度傾いております。軟弱地盤特有の地盤沈下現象です。

なにを隠しましょう、この建物は当方が設計と監理をしたダイヤ設計の建物です。
従って、施工業者が手抜き工事をしたわけでもなく、設計と監理に瑕疵があった訳でもありません。
(自分の建物の監理を手抜きする人はかなりの大物?です)

従って問題となる建物の不同沈下は発生しておりません。軟弱地盤現象の好事例として頭記したものです。


埼玉県の県南地域は一部の利根川水系や荒川水系の影響で軟弱地盤が非常に広く分布している、建物の敷地としては厄介な地盤で構成されております。

この写真からも判るように、地盤に建物等の荷重のない(載荷重のない)敷地であっても、地盤の沈下が発生する地域なのです。



4-1 軟弱地盤の定義

泥や多量の水を含んだ常に柔らかい粘土、または未固結の軟らかい砂から成る地盤の総称である。国土交通省「宅地防災マニュアル」では判定の目安として有機質土・髙有機質土(腐植土)・N値3以下の粘性土・N値5以下の砂質土。

簡単にいえば圧縮性が高く剪断強度が低い地盤のことです。

有機質土・髙有機質土(腐植土)

 昔は田地であった土地

 河川の背後地を埋め立てして造成した土地

 産業廃棄物が埋設されている土地
 (このような土地の場合、圧密沈下よりも性質の悪い圧縮沈下が建築後の短期間のうちに発生します。)

 盛り土の厚さが厚い新規の造成地であって、盛り土工事の施工時の<転圧不足>による不適切な施工管理がおこなわれている分譲地の場合。

仮に盛り土工事が適切に行われた場合でも盛り土の下の地山部分の地盤が傾斜した地盤での場合には支持地盤に強度差がある為に不同沈下をする可能性がありますから<基礎地業>の設計には業者まかせにせず専門家の
判断を仰ぐべきです。




4-2 軟弱地盤の問題点

圧密沈下がとまらない。(10年単位で長い期間に渡って継続する厄介な地盤です。)

建物を<ベタ基礎>で施工しても、支持地盤が地盤の内部で傾斜している場合には不同沈下が発生する可能がある。



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5 地盤判定の落とし穴
  (建築士・構造計算担当者さんへの提案とアドバイス)



① 地盤強度(許容地耐力)と地盤圧密強度は異なる。

身近な例で例えば、木造建物の梁の断面計算をする場合を例にとります。

最初に木造材自体に係る<荷重モーメント>から、その発生モーメントが許容曲げモーメント以下であるかをチェックします。次にその梁の載荷重による<撓み量>をチェックします。

この場合で梁のスパン(間隔)が長い場合、梁の断面は<荷重モーメント>はクリーアーした場合であっても、<撓み量>がパンクしてクリアーせずに断面を変更しなければいけない場合が良くあります。

地盤の場合もこの事例と同じ事象があります。
載荷重されている地盤にもクリープ現象が発生します。

クリープとは「一定の応力のもとで永久ひずみが時間とともに増加する現象」であり、材料の長期の変形特性を検討する場合に重要な性質です。

『支持地盤のクリープ現象』

工作物による載荷重によって地盤が圧密沈下が終了しても(一時圧密)、長期的にはその後に『土の粒子間の再配列』(変形)による二次圧密が進行、継続します。

この圧密量は一時圧密に比べて緩やかな沈下量ですがその性質上長期間に及ぶ緩やかな沈下量です。

特に腐食土がこん混入している軟弱地盤は今のところ完全には二次圧密理論計算が解明していない事情からも無視できない現象です。
地盤の支持力からだけの支持力算定は危険です。これが不同沈下の遠因の一つとなります。


② 土圧は必ず高い方から低い方へと流れる。

勾配のきつい山が、時間の経過とともにやがてなだらかになり地盤の安息角の近くで安定するように、地盤の位置エネルギーは低い方に平均化するように流れていきます。

従って、設計対象の敷地のみで構造計画をしてOKであることを確認しても、その敷地を含む近隣全体で地盤構造の品質を判定しないと、地盤トラブルの原因となる場合があります。

このことは、中小河川の近くの建物(住宅)を軒並みトランシットで計測すると、目視では確認できませんが、河川側に若干の不同沈下がみられます(2㎝から3㎝程度)。河川側に面する地盤改良杭や鋼管杭、基礎ベース幅は、貯金と思って10%程度割り増しして設計しておくことをお勧めします。



5-1 スエーデン試験の問題点

① SWS(スエーデン試験)のN値を盲信してはいけない。

試験は調査深度間においての単に土の相対的な硬さを判定出来るものであり、厳密な土質判定には不向きである。

同一敷地内においてA点はB点よりも相対的に固いとは、A点と点とは同じ程度の固さであるというような判断材料程度と考えるべきです。しかし、この試験は地中の支持地盤の勾配を知るうえでは低コストで有効な試験ではあります。


② 地表近くに比較的固い粘性土がある場合、この試験から算出されたN値はそれなりのN値として評価されますが、粘性土である以上長期荷重を受けた場合には粘性土沈下の危険性はあります。
洪積層であるローム層の下の粘性土であれば圧密は完了していると判定してもよいのですが、計算上のN値のみの判断は危険です。

その対象地盤を含むその地域全体の地盤状況から適切に判断が必要となります。


③ 土質試験用の乱されないサンプルを採取することが難しい地盤には、どうしてもボーリング試験の追加調査が必要となります。
ボーリング調査では、直接的に<N値>計測が可能であるとともに土質サンプルの採取ができる為、対象地の地盤の固さ(せん断強度)だけではなく圧密性や圧密時間を<土質試験>により確認ができます。
又地中の現実の地盤強度を知る為、<三軸圧縮試験>用の地質サンプルの採取も可能となります。


④ 主にスエーデン試験だけを主な営業としている業者は、地盤の専門家は少なく一部の業者を除き地盤データーの信頼性は低い場合がある。


⑤ この試験結果から算出された「N値」は2回の仮定換算計算による値であり、標準貫入試験により算出された「N値」との相関関係はそれ程高くないと考えるべきである。


埋戻し工事は簡単であるが現実的には最も難しい工事といえる。

既存擁壁の倒壊やひび割れ発生原因のかなりの要因は、擁壁背面の施工不良(転圧不足)によるものが多い。
「宅地防災マニュアル」によれば、一日の埋戻しの施工速度は5㎝/1日です。この基準を守っている現場はおそらく1パーセントもないのが現実かとおもいます。
当方の施工監理経験では、高速道路の路床版の工事現場くらいでした。


トラブルの発生しやすい建物や擁壁物件の場合、建物は2階建の建物であり、擁壁の場合は高さが2m以下の擁壁が多いという事実を肝に銘じることです。

その理由は、このような小規模の工事のケースでは施工者や工事発注者の技術レベルが低いことや、工事そのものに対する真剣さや気構えが少ないことに起因していると考えられます。



5-2 平板載荷試験の問題点

小規模建築物の地耐力を平板試験の結果から基礎を設計する設計者がおりますが、この試験方法のみで基礎計画をすることはかなり危険な方法であると考えます。

この試験の有効性は他の試験と併用する場合に有効な試験となると認識する必要があります。
この試験方法の有効な場合は、基礎部分から下部の地質が判っている場合や、圧密地層が存在していないことがボーリングデーターにより判明している場合です。

何故なら、この試験から得られるデーターは30㎝×30㎝の積載板に荷重を加え、荷重と載荷板の沈下量の関係から支持力を求める試験方法です。

この試験によって求められるデーターは、載荷板2倍程度の深さの地盤が対象です。

従って試験地盤より60㎝までの地盤データーにすぎません。試験面の箇所では建物が圧密しなくても、以下の地盤が圧密した場合は、不同沈下等のトラブルの原因になります。

費用対効果の点からもこの試験法1本の計画はお勧めできません。その割には試験費用も相対的に高額です。



5-3 最近地下水面は上昇している。この為、液状化しやすい地盤地域は拡大している。

東京は昭和30年代から40年代にかけて、地下水の過剰な汲み上げにより地下水位が著しく低下し激しい地盤沈下を経験した。しかしその後、法や条例による揚水規制を積極的に推し進めてきた結果、地下水位は上昇し、地盤沈下は沈静化しつつある。

区部の低地部の地下水位は、昭和40年頃まで低下し続けたが、揚水規制の 強化により昭和50年代にかけて急速な上昇に転じた。近年は上昇速度が低下したものの、概ね上昇傾向を維持している。

墨田区の吾嬬B観測井では、最も低下した昭和40年と比較すると、現在は約50m水位が上昇している。
『東京都環境局のデーター抜粋』

この観測データーからもわかりますが、現在は水位の上昇は緩やかではありますが、地下水位は法規制により地盤の沈下は停止傾向にあります。しかし反対に地下水位は上昇傾向にあるということです。
この為、液状化しやすい地盤地域は拡大している、ということになります。



液状化対策工事について。

前記の液状化のメカニズムのところで述べたように、液状化発生による被害を防止する為には下記の3項目のうち1つでもその事象を除外させればよいことになります。

1 地下水が存在すること。

2 ユルイ(粘土分の少ない)砂質地盤であること。

3 ある規模以上の地震があること。

   「液状化3条件」

このうち人為的、物理的に抑止不可能な項目は地震発生の抑止工法だけであるとおもいます。地下水の排除や砂質地盤の排除は可能といえます。技術的には何ら問題はありません。
問題となるのは、施工コストだけの問題です。現実に施工されております。



5-4 概要 抑止工法と抑制工法の選択


○液状化抑止工法とは


対象敷地に液状化現象そのものを発生させない工法です。

工法のいろいろ

「地下水位低下工法」「地中壁工法」があるが、両工法ともに1戸建での施工はコスト高の為経済的には無理があり、街区単位で施工する場合が多い。

「地下水位低下工法」はランニングコストの負担が大きい。
「地中壁工法」は液状化層が深い場合にはイニシアルコストが問題となり、施主からは敬遠される。

その他の「地盤改良工法」としては、液状化地盤の土の「置き換え工法」「薬剤注入工法」「締固め工法」等がある。

どちらの工法を選択するとしても、近接住宅地の地盤環境に影響する為、既設宅地での採用には制限を受けることになります。又街区単位で採用する場合には費用負担の割合の問題等があり、地元の行政の関与が必要となります。



○液状化抑制工法とは

対象敷地に液状化の発生を許すが、液状化による被害を軽微に抑え且つその修復工事をなるべく短期間、低コストで復旧させようとする工法です。
現実的には小規模な建築物の対策としては、コスト的にこの工法を選択せざるを得ないと考えます。


工法のいろいろ代表的なもの


「杭状地盤改良」

「小口径鋼管杭工法」←低コスト、推奨される工法

「杭基礎」

「基礎部分の強化」があります。←低コスト、推奨される工法

住宅地において液状化の個別的な抑止工事は現実的にはコスト面から困難であり、液状抑制対策への意識転換が必要です。これらの抑制工法を新築時に計画しておけば、その修復のコストは建築費の10~20%程度の費用で収まるはず
です。


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5-5 液状化は怖くない。?

その理由

① 液状化現象は直接的に人命被害につながらない。

「東日本大震災」の最大液状化発生地の千葉県浦安市に於いても、人的な被害は発生しておりません。又、前記3-1 液状化地盤とはの添付写真(新潟市の4階建県営アパート)においても、液状化による建物の転倒は比較的にゆっくり傾く為に人的被害は発生しておりません。

液状化した地盤て強い揺れが吸収され、構造体の破壊までに至らなかったことによります。室内の家具、重量物の転倒による被害も死亡事故にまで至らなかったのはこの為と思われます。津波や土砂崩れの被害と比較した場合「人命被害」という点からは格段に小さいといえます。


② 液状化対策工事は同時に、<地震対策工事>と<沈下対策>となる。

液状化対策工事における「浅層地盤改良工事」「杭地業工事」「基礎の補強当時」等工事は、支持地盤の強度(土のせん断強度)を高める工法であるともいえます。
支持地盤の強度を高めることは
地震対策に繋がる事になります。

従って軟弱地盤で且つ液状化地盤の地域であれば液状化対策工事に付加価値をつけて、軟弱地盤対策工事を同時に施すことはコスト的にはかなりメリットがあります。


③ 新築計画時建て替えの時点で液状化の前記の『抑制工事』をしておくこと。

被害を受けやすいのは重量の大きな建築物や構造物で、液状化砂層中に傾斜して沈み込んだり、浮力が働いて浮き上がったりします。新潟地震による新潟市における木造家屋の被害率は2%であったのに対し、鉄筋コンクリート(RC)建物の被害率は20%と10倍にもなりました。
参考文献 日本建築学会 編 建築紛争ハンドブック (丸善)

住宅等の小規模建築物の場合はその重量が軽い為、ビル等と比べてその被害は軽微であると想定されます。
通常、被害を受けても、基礎部分の部分的な「ジャッキアップ工法」で修復は可能となります。
その為にも新築時や建て替え時における、液状化地盤にたいする『グレードの判定』は重要となります。



5-6 設計者と土地分譲者の地盤の法的なリスク管理について。


① 自然現象と設計者、施工者の責任

二昔前ごろまでは建築訴訟においては、地盤リスクに起因する斜面崩壊・擁壁の倒壊・不同沈下に対する損害賠償事件の設計者や施工者による賠償金額には、「温情判決」ともみられる判決内容がありました。
裁判所の判断背景には以下の要因があったと考えられます。


② 地震や台風、地盤の変状等による工作物への被害発生は、人間判断の範疇を超えたものである。従って裁判所の<法律判断>になじまない部分がある。


③ しかし最近の施工技術進展、建築部材、構造計算ソフトの高度化や建築関係の資格制度等々の整備がありました。


又、品確法(平成11年6月23日)や瑕疵担保履行法(平成19年5月30日)の成立以降の裁判所の判断は、かなり問題を起こした場合の設計者や施工者の責任を認め、その賠償額が格段に高額な判決が下される傾向にあります。

明らかにこれら専門職の『善管注意義務』違反者に対する、判断基準のレベルが高くなった結果と思われます。

設計単価や施工単価の契約金額が相対的に安価であることや、無償で設計図や施工図単に職印を押印しただけという事例であっても、<対価性>の有無は以前のようには賠償金額に反映されなくなりました。

判官の心情としては、このような<名義貸士業>の存在が建築業界全体のモラル低下の要因である、と考えたのであり、『アメリカ的なる判断基準』に影響されたものと考えます。

それにしても例の「姉羽偽造事件」以来、構造関係の行政側の審査チェックは厳しくなり建物の構造強度は格段に向上しましたが、一方地盤関係の審査内容は、行政側に専門の人間が少ない為かその審査基準が曖昧な気がしてなりません。確認審査が交付されたからといつて、地盤のトラブルの責任を設計者が免れるわけではありません。

建築主事の判定と裁判官の判定は、別個の法的には関係性の薄い判断なのです。その結果、設計者個人に地盤調査データーの「判定能力」までも要求される時代になってきたのです。



5-7 <一言コメント>

軟弱地盤や液状化及び「行政側のデーター」からもその危険度が判明している地域に於いては、その対策工事や工法に付いて確認申請の審査内容としてチェックをして、確認申請を下すシステムの構築が待たれるところです。
震度5以上の地震は我が国にとってそれほど珍しい事ではありません。このことには国民財産の散逸防止に繋がることになるはずです。


平成13年内閣府の「中央防災会議」発表の<首都直下型地震>予想人命被害総数

首都圏全体で23,000人であり、そのうち建物倒壊による人命の被害予想では6,400人と想定されております。このような大きな地震に遭遇しても各種対策をしておけば、土地や建物が破損や変形をしても「建物の倒壊」という最悪事態は防げると考えます。

  以上


 





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