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次の県南地域の地盤に関する技術文書は、(有)地盤計画の鈴木敏彦氏によるものです。私たちの住んで
いる県南地域は、大宮台地部分を除いて有数の不同沈下を起こしやすい軟弱地盤(腐植土)上に位置する
為に、特に一文を寄せて頂きました。
尚、埼玉県の地盤地質に関する質問や専門的な疑問がありましたら、直接電話でお問い合わせください。
電話 048−873−0224
埼玉県南部の地盤についての考察
埼玉県南部の地形を見ると、図3−1に示すように北から南に5〜15kmの幅で島状に発達する大宮台地と呼ばれる洪積台地と、この台地の東側を流れる中川(古利根川)沿いの中川低地と、西側を流れる荒川沿いの荒川低地の沖積低地との二つに大別される.
また、台地内は綾瀬川や元荒川により分けられるほか、台地内部に源をもつ小河川(鴨川・霧敷川・藤右衛門川・芝川)により開析され、谷地形が形成されている。
台地の標高は、北西部の北本市高尾で30m、中央部の大宮・岩槻付近で13〜15mで最も低く、これより南で再度高くなり、南部の川口市安行付近では20mに達する.これに対して低地は、台地と5〜10mの比高差を持ち明瞭な崖地形で接している.
図−1 大宮台地と周辺部の地形面区分図
(出典:日本の地質3「関東地方」P173参照)
<大宮台地の地質>
大里ローム・立川ローム・武蔵野ロームから成る関東ローム層を最上部層として、中部は火山灰質のシルト質砂層を主体とする大宮層、下部は貝化石の多い泥層とその下位の砂礫層から成る東京層で構成される.
●関東ローム層の特徴 @貫入試験によるN値=2〜4回のロームは、長期許容支持カで
100KN/uの地耐力が期待でき、RC造3F以下の軽量〜
中量構造物の支持地盤となる.
●大宮層の特徴 A地表から7〜20m下に分布するN値=10〜30回の砂は、
摩擦杭に適した地盤である。
●東京層の特徴 B地表から40〜45m下に分布するN値=50回以上の砂・
礫層は、重量構造物の支持杭に適した地盤である。
表3−1 大宮台地の地質層序
(出典:日本の地質3 「関東地方」P174参照)
<荒川・中川低地の地質>
自然堤防・旧流路・後背湿地から成る両低地は大宮台地の南東部で合流し、東京の下町一帯を含む東京低地へ連続している。また、今から10,000〜6,000年前の有楽町海進時には、現在人が住んでいるかなりの部分は海(内湾)の中であり、構造物の支持地盤として適さない場所が多い地域である.
低地の地質は、上部の有楽町層(三室層・新曽層・谷塚層)と下部の七号地層(伊刈層・戸田層・八潮層)の二つに大きく分けられる。
●有楽町層の特徴 @表層から10m以浅に分布するN値10回以下の緩い砂質土は、
地震時に液状化する可能性が高い地層である.
A軟弱な厚いシルト層は、杭基礎を採用した場合、ネガティブ
フリクション(負の摩擦力)が作用するので、その安全性を
検討する必要がある.
B強度特性を示すN値は、粘性土でN=0〜5回、砂質土でN
=5〜20回である.
C基底に礫混じり砂から成る基底礫が存在する.
東京湾奥における沖積層層序表 (出典:日本の地質3「関東地方」P193参慣)
七号地層は泥炭層を挟む有機質な砂泥互層から成り、10〜20mの層厚で堆積しており、同様に基底礫屠が分布する.
●七号地層の特徴 @泥炭層を挟む有機質な砂泥互層から成り、10〜20mの
層厚で堆積している.
A表層から20〜40m下に埋没谷が存在し、草加付近では
台地面と70〜80mの比高差がある.
B強度特性を示すN値は、粘性土でN=4〜10回、砂質土で
N=6〜30回以上である。
C基底に礫混じり砂から成る基底礫が存在する。
図−2 荒川・中川低地の地質断面図 (出典:日本の地質3「関東地方」P195参照)
<谷間の地質>
台地部の谷間には、圧縮性に富む腐植土層が堆積していることが多く、谷間の中心部で厚く、
周辺部で薄くなる傾向がある.
●腐植土層の特撒 @盛土を行った時の沈下量は非常に大きく、安定するまでに
長期間(3〜5年以上)を要する。
A腐植土層の層厚が変化している場所では、沈下量に大きな
違いが見られ、構造物に不同沈下が発生する。
B木造2F建の軽量構造物を建てた場合、腐植土の層厚が1m以上
あると、10cm以上の沈下が新たに発生する可能性が高い.
<斜面部の切土・盛土の地質>
切土面の地層と盛土面の地層が相違していることが多く、地耐力の違いにより不同沈下を起こす事が多い。
●切土・盛土対策 @転庄を十分に行い、軽量構造物の場合でもベタ基礎を採用するのが
望ましい。
A支持地盤の地耐力は、弱い方(盛土)の値を採用する。
B台地と低地の境界付近は、敷地内で地層と層厚が変化するので、
詳細な調査が必要である.
図-3 谷間の模式断面図
以上です。
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