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マンション管理関係判例


bW 外壁、バルコニー/設置した工作物等


平成 7年 8月31日  福岡地判 


判決要旨
ルーフバルコニー上に建築されたサンルームについて撤去が命じられた事例

判決日・当事者
平成7年8月31日判決言渡
同日原本受領・裁判所書記官
平成6年(ワ)第202号 建物収去請求事件
○○1丁目9番17号
 原        告  X1管理組合
 上代表者理事長     X2
 上訴訟代理人弁護士   吉 野   正
 上訴訟復代理人弁護士  宮 下 和 彦
○○1丁目○○番○号
 被        告  Y1
○○1丁目12番5号
 被        告  Y2
 上2名訴訟代理人弁護士 中 山 茂 宣
 同           杉 田 邦 彦
 同           有 岡 利 夫
 上訴訟復代理人弁護士  酒 井 辰 馬

 【主 文】
  一 被告らは、原告に対し、別紙目録一記載の建物の別紙図面の斜線部分にある建物を収去せよ。
  二 訴訟費用は被告らの負担とする。
  三 この判決一項は仮に執行することができる。

 【事実及び理由】
第一 請求
   主文一項と同旨
第二 事案の概要
   本件は、マンションの管理組合が5階(最上階)のルーフバルコニーに建物(倉庫兼サンルーム、床面積17.11平方メートル)を建築した住人に対し、マンショシ管理規約に基づきその撤去を求めた事案である。
 一 争いのない事実
  1 原告は、○○市○○区○○1丁目9番17号にあるマンション「X1」(本件マンション)の区分所有者全員をもって結成された管理組合であり、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境の確保を目的とする団体である。代表者X2は同管理組合の管理者であるとともに、同組合の総会の決議で訴訟追行権者に指定された者である。同マンションは、鉄筋コンクリート造、地下1階、地上5階建で、区分所有者(組合員)総数は8名(議決権総数8名)であり、管理組合規約使用細則を定めている。
  2 被告らは、本件マンション5階の別紙目録二記載の建物の専有部分を所有する区分所有者である。被告らの専用部分の外側建物上には、ルーフバルコニーが別紙図面のとおり共用部分としてある。被告らはこのルーフバルコニーに専用使用権を有する。
  3 本件マンションは、1階から5階まで居住用となっている。各専有部分を分けるコンクリート壁、廊下、エレベーター、床階段等は、区分所有者全員の所有にかかる共用部分である。区分所有者及び建物専有部分の占有者は、円滑な共同生活を維持するため管理組合規約使用細則を誠実に守り(規約3条)、共用部分等をそれぞれ通常の用法に従って使用しなければならない(規約13条)。共用部分に勝手に加工を加えて、他の区分所有者の所有権を害したり、共用部分に物品を放置して、共用部分の他の区分所有者の占有を害してはならない(建物の区分所有等に関する法律17条、18条)。
  4 被告らの専用使用権を有するバルコニーは、管理規約別表三によって、「構造・用途・色調の変更並びに構築物建造物の構築禁止」とされている。使用細則1条(11)では専用使用部分の外観を変更すること、(12)バルコニー・テラスにサンルーム・物置・池等これに類する建築物を構築または設置することが禁じられている(規約17条)。
  5 被告らは、被告らの専用使用するルーフバルコニーに別紙図面のとおりの建物(サンルーム)を建築(設置)した。
二 争点
 1 被告らの本件規約承諾が錯誤により無効であるか。
 2 本件建物は規約違反になるか。
 3 原告の本件請求は権利の濫用か。
第三 争点に対する判断
 一 証拠(甲1〜8、乙1の1 ・2、2、3、証人B、被告Y2本人)並びに弁論の全趣旨によると、以下のとおり認められる。
  1 被告らは、本件マンションの5階の建物部分(501号室、被告ら専有部分)を、「株式会社A」から平成3年4月30日買い受けた。上売買に先立ち, 被告Y2は、同社の営業担当者から、本件ルーフバルコニーに倉庫を建ててもよいが、○○市による建築竣工検査終了後にするように言われ、被告らは、上検査終了後に、本件収去を求められている建物(本件建物)を建築した。
  2 被告Y1は、平成2年5月23日、被告ら専有部分の売買契約に際し、本件マンションの管理規約(甲1)を承認する内容の承諾書(甲2)に署名押印した。
  3 本件建物完成後、本件マンション4階の住人から、日照に悪影響があり、本件建物は管理規約に違反している旨のクレームが出た。
  4 本件マンションの管理をしているCの社員が本件建物について調査したところ、本件建物があることによって、容積率の点で、本件マンション全体が建築基準法違反になるとの○○市の回答を得たので、○○市の方から撤去を求めるよう頼んだが、○○市は民事問題に介入しない態度をとっている。
  5 被告らは、本件建物が建築できないのであれば、甲2の承諾書に署名する意思はなかったが、一連の書類とともに署名したため、管理規約で、本件建物が建てられないことは認識していなかった。
 二 以上の認定事実を前提に検討すると、まず、被告ら主張の本件マンション管理規約の承認が錯誤により無効であるとの抗弁は、売買に際して、買主として重要文書にきちんと目を通さなかったのは自らの落ち度であって、今更、錯誤により無効との主張をすることは許されない。
 次いで、本件建物が実質的に規約に違反しないとの被告らの主張も、日照及び建築基準法の容積率との関係で、不当、違法な状況を生じているのであるから(前記認定3、4)、これも相当でない。
 更に、本件請求が権利濫用であるとの被告らの主張も、本件建物がなければ、被告らが○○○号室の所有使用に著しい障害を生じるといったものではなく、多少快適性が減少するのを我慢すれば足りることであって、やはり相当でない。
 蛇足ながら、被告らは、「検査終了後に本件建物を建てるように」と、「株式会社A」の営業担当者に言われたとすれば、その時点でその理由を質して、疑問を持って、本件建物の問題点(後日、本件のような問題を生じること)を認識すべきであり、仮に、同社のセールストークに騙されたというのであれば、その損害を同社に請求すれば足りる。
三 結論
  以上により、原告の被告らに対する本件請求は理由があるので、これを認容すべきである。
  よって、主文のとおり判決する。
   福岡地方裁判所第6民事部
     裁判官  吉 田 京 子

別紙

   目   録
一 1棟の建物の表示
  ○○市○○区○○1丁目9区146番地
  建物の番号 X1
  鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付5階建
     1階  156.46平方メートル
     2階  169.30平方メートル
     3階  167.95平方メートル
     4階  167.95平方メートル
     5階   88.88平方メートル
   地下1階  194.62平方メートル
 敷地権の目的たる土地の表示
  土地の符号  1 ○○市○○区○○1丁目9区146番
           宅地 391.50平方メートル
二 専有部分の建物の表示
  家屋番号  ○○1丁目○○○番の○○○
        居宅 鉄筋コンクリート造1階建
        5階部分  83.86平方メートル
  敷地権の表示 1 所有権 10000分の1321 平成3年3月6日 敷地権
測量図・求積表〈別添画像〉





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