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マンション管理関係判例


bS
 居住ルール・管理規約/設置した工作物等


昭和53年 2月 1日 判時911-134 東京地判  関連条文 区分所有法5条23条


判決要旨
マンションの共有敷地につき専用庭としての使用目的に違背して、駐車場として利用するためブロック塀を取壊し、門扉を設置した専用使用権者に対し原状回復義務が命じられた事例


判決日・当事者
妨害排除等請求事件、東京地裁昭51(ワ)1525号、昭53・2・1民33部判決、認容(控訴)
《当事者》
原  告 X1
     〈ほか11名〉
上原告ら訴訟代理人弁護士
     浦 田 武 知
同    荒 井 重 隆
被  告 Y1
同    Y2
上被告ら訴訟代理人弁護士
     猿 谷   明


【主文】 一 原告に対し
1 被告らは別紙物件目録記載の土地を駐車場として使用してはならない。
2 被告らは別紙物件目録記載の土地上に設置してある別紙図面(一)表示の甲乙間の門扉を撤去せよ。
3 被告らは上撤去後別紙図面(二)のとおり
(1)甲丙間に縦19センチメートル、横39センチメートル、厚さ10センチメートルのブロック40個を5列8段に、縦19センチメートル、横30センチメートル、厚さ10センチメートルのブロック8個を1列8段に積み上げてブロック塀を設置し、
(2)丙乙間に、乙点の内側(庭側)地点に片開扉吊元柱(高さ1.6メートル、柱材は縦10センチメートル、横10センチメートル、厚さ3.2センチメートルの角形鋼管)、丙点の内側(庭側)地点に片開扉戸当柱(高さ1.6メートル、柱材は縦10センチメートル、横10センチメートル、厚さ3.2センチメートルの角形鋼管)を各設置して、施錠金具付高さ1.4メートル、巾1メートルの片開扉鉄製門扉(枠材4本、帯材2本は、縦7.5センチメートル、横2センチメートル、厚さ1.6ミリメートルの格子材8本は縦5センチメートル、横2センチメートル、厚さ1.6ミリメートルの矩形鋼管であって、これらを使用して格子型に組んだもの)を蝶番で上元柱に取り付け、且つ、上当柱に施錠できるように設置せよ。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。
三 この判決のうち前記一の2及び3については仮りに執行することができる。


【事実】第一 申立
 一 原告ら
 主文第一、二項と同旨、仮執行宣言(但し、主文第一項2及び3につき)
 二 被告ら
 1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 主張
 一 請求の原因
 1 原被告らは東京都○○区○○5丁目29番11号所在の「○○コーポラス」(以下、本件マンションという)の区分所有者であり、且つ別紙物件目録記載の土地(以下、本件土地という)を含む本件マンションの敷地の共有者である。
 2(1) 本件マンション及びその敷地の全購入者は各自売主A株式会社との売買契約により一定面積の専有部分の区分所有権並びにその面積割合に応じた敷地の共有持分を取得したが、その際、敷地の一部に設けられた庭及び駐車場について売主が定める専用使用権者の専用を承認した。
  (2) 但し、専用使用権者は上売買契約により専用使用部分を定められた目的以外に使用してはならず、結局、全購入者は専用使用権者が上売買契約に定める目的に従って使用する限りにおいて、その専用使用権を承認しているものである。
  (3) 本件土地は被告らのため上売買契約にいうところの専用使用権の設定された庭である。
 3 また、本件マンションの各購入に際し、売主A株式会社から提示された案どおりに設定された「B共同管理規約」によれば共有部分の現状変更については共有者全員の同意を必要とする。そして本件土地は上管理規約にいう共同所有部分である。
 4 被告らは本件土地を駐車場として使用することを計画し、昭和49年7月27日前記管理規約により組織を義務づけられている「共同管理集会」の臨時総会に本件土地の使用目的の変更及びこれに伴う本件土地上の設置物の改造工事(従来の門を車が出入できるよう広くする工事)について承認を求めてきたが、承認は得られなかった。
 5 ところが被告らは昭和50年7月29日突然ブロック塀等の取壊しを始め、在宅中の居住者が中止を求めたにもかかわらず、取壊しを了し、更には前記管理集会からのブロック塀等の修復の要求を無視したうえ、同年6月に駐車場築造工事(別紙図面(一)乙丙間の門扉を車の出入のため甲乙間に拡幅して新たに甲乙間に門扉を設置)を開始し、在宅中の居住者が中止を求めたにもかかわらず上工事を続行して翌日完了した。
 6(1) 被告らが本件土地を駐車場として使用することは前記売買契約〔1〕基本条項[
項及び管理規約8条に違反するから、これら契約及び規約に基いて駐車場としての使用禁止を求める。
  (2) 前記管理規約10条(1)によると共有者全員の同意がなければ共有部分を変更してはならないものとされているが、被告らの前記工事は共有者全員の同意のない共有部分の変更に該当し規約10条(1)に違反する。したがって被告らは別紙図面(一)記載の甲乙間の門扉を撤去し、撤去後別紙図面(二)のとおり甲丙間にブロック塀及び丙乙間に従前同様鉄製門扉を設置して原状に復すべき義務がある。
  (3) 仮りに上主張が認められないとしても、本件土地上のブロック塀等の設置物は本件土地の一部を構成する附属施設であるから原告らの共有に属するものであるところ、被告らはブロック塀等を取壊し、新たな門扉等を設置して本件土地を違法に侵害しているから原告らは所有物妨害排除請求権により妨害の除去(原状回復)を請求することができる。
 よって原告は被告らに対し請求の趣旨一の1ないし3及び二記載の如き裁判を求める。
 二 認否
 1 請求の原因1のうち被告ら関係は認めるが、原告らの関係は不知。
 2 同2のうち(1)は認め、(2)は否認、(3)は認める。
 3 同3及び4は否認する。
 4 同5は認める。
 5 同6は争う。この点に関する被告らの見解は後記のとおりである。
 三 被告らの主張
 1 訴外A株式会社と被告ら間の売買契約によると専用使用権設定部分は使用目的を「1階建物専有部分付属の庭」とし「定められた目的以外に使用してはならない」と定められている(基本条項〔1〕[)。
 ところが管理現約8条には「専用使用権者以外の者は専用使用部分を無断で使用してはならない」と規定しているのみで他に専用使用権者の目的外使用について何ら定めていない。したがって専用使用権者は本件建物の売主に対しては専用使用部分の目的外使用について契約違反の責任を負うことはあっても他の区分所有権者に対し管理規約違反の責任を負わねばならない根拠はない。
 2 仮りに管理規約違反の責任を負うとしても、被告らには原告ら主張の如き違反は存しない。すなわち本件土地は元来面積30.88平方メートルの全面芝生を植えた平坦地で周辺部分に小樹木が数本植えてあったところ被告らはその芝生の一部を除去し長方形にコンクリートを打って駐車場としたもので周辺の樹木も花壇も原状のまま残っており柱、屋根等を備えた車庫様の建造物を建築したわけではない。したがってコンクリート部分を撤去すれば容易に原状に復するもので庭の一部を駐車場に兼用しているに過ぎないから使用目的を「変更」したことにはならない。
 3 原告ら主張の如く本件土地上のブロック塀、門扉は本件土地の一部を構成する附属施設であって「共有部分」といわねばならず、規約10条の「共用部分」に該当しないから被告らの行為は同条によって区分所有権者全員の同意を要する事項にはあたらない。また、前記ブロック塀門扉は被告らの専用使用部分の外廓を構成する施設であるから専用使用権者が目的の範囲内で専用使用に必要な限度で自己の負担において改良もしくは補修工事をすることは専用使用権の行使であって管理規約10条にいう「共用部分の変更」に該当しない。
 四 原告らの反論
 1 被告らの主張1は争う。売買契約の際に設定された専用使用権と管理規約に定められたそれとは同一内容をもつものであって管理規約上も被告らには本件土地を庭として使用することのできる専用使用権が認められているに過ぎず、目的外使用について管理規約違反の責を負うのは当然である。
 2 同2も争う。本件土地上のブロック塀門扉等の改造工事は被告らが本件土地を駐車場として使用する目的のもとになしたものであり、且つ本件土地を駐車場として使用しようとすればいつでも使用可能な客観的状況を作出しているものであるから管理規約8条に違反することは明らかである。
 3 同3も争う。管理規約上の利用管理については「共有部分」は「共用部分」と同様の取扱いをする構成になっている。したがってブロック塀等の設置物の利用管理は管理規約10条によって規制され、同条(1)により共有者全員の同意がなければ、その変更はできない。仮りに改良工事だと解しても同条(1)但書により共有者の持分4分の3以上の同意を得なければならないものである。
第三 証拠《略》

【理由】 一 請求の原因1のうち被告らが本件マンションの区分所有者であり、且つ、本件土地を含む敷地の共有者であること(《証拠略》によると、詳しくは被告らの区分所有部分は7階建本件マンションの1階101号室で被告Y1が持分5分の4、被告Y2が持分5分の1の割合で共有していることが明らかである)は当事者間に争がなく、《証拠略》によれば原告らも同様本件マンションの区分所有者であることが認められる。
 二 請求の原因2のうち(1)及び(3)は当事者間に争がない。そして、《証拠略》によれば同(2)の事実を認めるに充分である。すなわち訴外A株式会杜が本件マンションの専有部分を原被告らほかの区分所有権者に売却するに際し、締結した各同様の売買契約書基本条項〔1〕の[によれば「専用使用権の設定」として「パーキングスペース該当部分及び1階建物専有部分附属の庭については専用使用権を設定し、専用使用権者の専用を認めるものとする。但し定められた目的以外に使用してはならない」と規定され、これをうけて〔U〕細則第11条には「専用使用権の認知」と題して「買主は売買物件のうち、パーキングスペース該当部分並びに1階建物専有部分付属の庭については、売主の指定する専用使用権者の専用を認めるものとする」と定められ、同第13条には「管理規約の遵守」と題して「買主は共用部分の使用等については、別紙『B共同管理規約』を遵守することを確約する」旨定められ、上B共同管理規約によると、第8条には「専用使用」と題して「区分所有者全員は不動産売買契約書に基づき庭及びパーキングスペースについて専用使用権者の専用を認める。使用権者でない区分所有者は無断でこれを使用してはならない」旨、また、同第10条には「共用、共有部分の現状変更又は処分」と題して「(1)共用部分の変更は共有者全員の同意を必要とする。ただし、共用部分の改良を目的とし、かつ著しく多額の費用を要しないものは、共有者の持分4分の3以上の多数で決することができる。以下省略」旨、さらに同第11条には「共用部分の損傷に対する責任」と題して「区分所有者が自己の責に帰すべき事由によって共用部分を損傷した時は、その補修費用の全部を負担しなければならない」旨、同第12条には「集会の承認を要する行為」と題して「区分所有者は、次の各号に掲げる行為をしようとするときは集会における全員の承認を得なければならない。また実施に際してはA(株)に照会しその意見を徴するものとする。1専用部分の外観及び建物構造(第13条第1号に規定する構造部を除く)を変更すること。以下省略」等の定めがなされ、《証拠略》によれば、区分所有者全員は、これらの条項を承認して本件マンション専用部分を購入したことが明らかであるからである。
 三 請求の原因3につき、本件土地が前記管理規約にいう共有部分で、その現状変更については共用部分の現状変更と同様共有者全員の同意を必要とすると解されることは、既に前記二において明らかにしたとおりである。
 四 請求の原因4は《証拠略》から、これを認めるに充分である。なお、《証拠略》を総合すると、被告らは当初からの本件マンションの入居者ではなく被告Y1がA株式会杜の従業員で大阪より転勤して来たため本件マンション建築後2年位して同社が前居住者から買戻していた本件マンション101号室を購入して入居するにいたったこと、ところが旧門扉はからくさ模様の素通しの鉄製のため外から内部がまるみえであり、近くにゴミ集積所があって犬や猫などが残滓を庭に持ち込んだり、糞をしたりして不快だし掃除にも困ること、物売や浮浪者が無断で庭に入ってきたりして不用心である等の理由で被告らは昭和48年末頃から門扉の改造をしたい意向を洩らしていたが、昭和49年3月頃になって他に駐車場として借りていたところが、借りられなくなったため本件土地の一部にコンクリートをべた打ちして駐車場とし、車の出入のため旧門扉を取壊して開口部を広くしたいと思い話題にしたところ必しも賛成が得られなかったため、被告らに好意的な他の居住者の助言に従い正式に役員会を経て同年7月の臨時管理集会に提案したところ、委任状提出者の中には相当数の賛成者があったが、出席者は全員反対し、結局、共有者全員の同意は得られず提案は否決されたこと、その後被告ら特に妻である被告Y2は上に納得しがたいとして居住者にアンケートを求めたり、夫妻ともども管理会宛に質問書や調査結果を出したりしていたが遂に昭和50年に入って次項の如く改造工事を強行するにいたったこと、以上の如き経過であることが認められ、他にこれに反する証拠はない。
 五 請求の原因5は当事者間に争がない。
 六 以上の事実によると被告らの強行した駐車場築造工事は本件マンションの売買契約〔T〕基本条項[ならびに管理規約8条、10条に違反するものとして被告らにはこれを旧に復すべき契約上の義務ありといわざるを得ない。
 1 被告らは上工事は売買契約の上条項に違反することはあっても、管理規約8条違反として他の区分所有者に責を負うべきいわれはないし、使用目的の「変更」にも当らないと主張するが、本件マンションの区分所有者は売買契約ならびにこれを受けた管理規約を承認して入居していること前記二に明らかにしたとおりであるし、前記工事の主たる使用目的が駐車場としての利用にあることは現実の工事結果がこれを示しているといわねばならないから、上主張は当を得ないといわねばならない。
 2 また、被告らは前記工事は共有部分の現状変更にはなっても管理規約10条にいう共有者全員の同意を要する共用部分の現状変更には当らないし、専用使用権の範囲以内における改良工事であって規約違反の責を負うべきいわれはないとも主張するが、管理規約10条にいう共有者全員の同意を要する現状変更の中には共有部分のそれも含まれると解されること(前記二、三)、のみならず規約12条には専用部分の外観の変更には管理集会における全員の承認を要する旨規定されているが、その承認はなかったこと等を勘案すれば上主張もまた失当といわざるを得ない。
 3 《証拠略》によれば、被告らが執拗に前記工事の正当性を主張する背景には、専用使用権の認められている本件土地の一部に自己の費用で従前よりも外観上立派な門扉を作ることは誰にも迷惑をかけることではないし、かえって共有者全員の利益であるのに、管理規約を楯に一部のものが反対するのは専用使用部分をもたない連中のやっかみであり、為にする反対として納得しがたいというところにあることが窺われ、《証拠略》中には、専用使用の庭を駐車場として利用することが許されるとすれば、処分価格が急騰して莫大な利益がある故そのようなことは許されない趣旨の供述部分がみられ、被告らの納得しがたいとする点も一概に否定し去ることのできない面がないではない。しかし飜って考えてみれば、本件マンションのみならず一般に高層住宅とは縦割長屋ともいうべき共同住宅であるから居住者一人の利便のため、勝手にその欲することをなさしめるとすれば、いくら他に迷惑をかけないとしても、共同生活全体の秩序が維持できないことは見易い道理であり、一旦、秩序が乱されるとなれば吾も吾もと秩序の破壊が行われて平穏な生活の安定は望み得べくもないことも容易に推測される。売買契約、これをうけた管理規約にそれほどまでの厳格な要件を定めなくともの感がなきにしもあらずの規定が置かれているのは、ただに上共同生活の秩序の維持に主たる目的が置かれているものと解され、入居者はこれらを承認して入居している以上、時に納得しがたいと思う面があっても、これに従う義務のあることは云うまでもない。《証拠略》によると、本件マンションにおいて、従前、ベランダ部分に1室を作ったことがあったので、規約違反を理由にその撤去をさせたことがあったり、ベランダに芝生を植えたいとの希望を規約に基いて容れなかったり、ベランダの手すりの塗りかえをやりたいとの申出に対し、全体として統一するよう居住者全員の負担でそれを行ったような事実が窺われるがこれらもすべて前記の如き共同生活の秩序を維持するという実質的な理由に基くものといわねばならない。したがって前記工事を強行した被告らは規約違反の責を免れず、原状回復の義務を負うとする以外にない。
 4 なお、原状回復について《証拠略》記載の現状図と原告らが原状回復工事として求めている別紙図面(二)とを対比すると、完全な復元ではないことが明らかであるが、《証拠略》によると、目的を達するため出来るだけ費用を節約して被告らに迷惑をかけないようにする趣旨で一部被告らのなした前記工事を利用して別紙図面(二)記載の限度でその回復を求める趣旨であることが認められるので原状回復義務の範囲内で別紙図面(二)の工事をなすよう求める原告らの請求部分は認容するのに妨げはない。
 七 以上の次第で、その余の争点に言及するまでもなく、原告らの請求はすべて理由があるから、これらを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条、93条を、仮執行の宣言につき同法196条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 麻上正信)


別紙 物件目録《略》
   図面(一)(二)《略》





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