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マンション管理関係判例

 

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外壁、バルコニー/設置した工作物等


昭和47年 5月30日 判時667-10 東京高判  関連条文 区分所有法5条23条24条25条


判決要旨
@公団分譲住宅の買受人全員を組合員とする団地住宅管理組合の建築協定が国法の範囲内で現在及び将来の団地住民を拘束する自治規則であると認められた事例/A公団分譲住宅のバルコニーを温室とする工作がバルコニーの改築を禁止した前記団地住宅管理組合の自治規則である建築協定に違反するとされた事例


判決日・当事者
工作物撤去等請求控訴事件、東京高裁昭45(ネ)2518号、昭47・5・30民2部判決、原判決取消、認容(上告)
一審東京地裁昭44(ワ)10548号、昭45・9・24民13部判決
東京都○○区○○1丁目127番地X1団地
 控訴人       X1
 上代表者理事長   X2
 上訴訟代理人弁護士 一瀬英矢
上同所同団地9号棟206号
 被控訴人      Y1
 上訴訟代理人弁護士 西田公一
 同         更田義彦


   【主   文】
原判決を取り消す。
被控訴人は別紙目録記載のバルコニーの南側の手すり用障壁上に設置した窓(ガラス戸のほかこれをはめこむための木製及びアルミサッシ製の外わく部分を含む)ならびに同東側隣家のバルコニーとの境の仕切板の上部に設けた回転窓を撤去すべし。
被控訴人は上各物件を撤去するほか、上バルコニーを改築してはならない。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
この判決は第2項に限り仮りに執行することができる。


   【事   実】
 控訴代理人は主文同旨の判決及び第2項について仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する(但し原判決2枚目裏7行目の「本件バルコニーを含む」とある部分を削除する)。
(控訴人の主張)
 (一) X1建築協定(以下建築協定という)第11条の規定は、禁止について何らの留保を付けていないので、これに違反した場合は、理由のいかんを問わず原形に復させるという上協定第13条第1項第三号の趣旨からしても、いやしくも構造上改築と認められる程度のバルコニーの改築は、すべて控訴人組合の構成員である組合員の共同利益を害するものとして、これを全面的に禁止する趣旨である。
 (二) バルコニーは建物の土台、柱、隔壁、天井とともに建物の躯体すなわち建物の本体を構成し、組合員全員の共有に属し、従って組合員の単独所有ではない(各組合員に対する建物の分譲面積は、建物の躯体部分を除いた室内の正味面積として計算しているのであって、バルコニー部分はもとより除外している)から、建築協定による禁止をまつまでもなく、民法第251条、建物の区分所有等に関する法律第12条により組合員による自由な改築は認められないが、X1規約(以下組合規約という)は第7条第2項第1号により共同住宅の建物の躯体部分全部を組合の管理する共有物と定め、組合員が自由に改築できないようにし、建築協定も第11条第2号によりこの趣旨に沿ってバルコニーの改築を禁止したのである。
 (三) 被控訴人のした本件バルコニーの改築は、団地の美観を害するおそれがある。すなわち団地における建物の美観は、建物全体ひいては団地全体からみて、均斉のとれた統一美を必要とし、部分的にみて美しいものであっても、そこに統一美がなく区区とりどりというのであっては、その目的を達することはできない。仮に被控訴人のしたバルコニーの改築が体裁のよいアルミサッシ窓であったとしても、建物全体ひいては団地全体からすると、他との調和を欠き美観を害している。次に本件バルコニーに付設されたアルミサッシそのものは軽いものであったとしても、それにはめ込んだガラス戸や、部屋として密閉された中に置かれた物の重さを考えると、バルコニーの存立に危険を及ぼすおそれがあり、また暴風や地震によってアルミサッシ窓が落下する危険もある。さらに本件バルコニーは隣家の避難路として供されるのみならず、各居室を通じて同1階の南側バルコニーのすべてに通り抜けられるようになっており、同1階の居住者全員の共用避難路として確保しなければならないが、バルコニーが密閉されると中に何が置かれているかわからないし、鉢植も並べようによっては通行の支障となろう。またバルコニーの天井は居室のひさしをかね、窓ひさしと同様火災が上の階に延焼するのを防止する機能を有するから、バルコニーには可燃物を置かないように注意すべきであるが、被控訴人のしたバルコニーの改築は、バルコニーの有する上火災時における延焼防止の機能を阻害するものであり、そのほか本件バルコニーの改築によって、雨の吹きつける日には雨水が上から滝のように落ちるなど、降下の居住者に色々な迷惑を及ぼしている。
 (四) 建築協定によると、組合員が建物を改築する場合には、隣接する両隣り及び上下の組合員4名の承諾書を添付するなどして、所定の届出をし、事前に理事会の承諾を受けなければならないにかかわらず、上手続を履践することなく、バルコニーを改築した被控訴人の行為は、団地の自治を破壊する違法な行為である。
(被控訴人の主張)
 控訴人の主張事実中、組合規約第7条第2項第1号に控訴人の主張するような規定があること、上規定にいう共同住宅の建物の躯体部分にはバルコニーに該当する部分の躯体を含むこと及び組合員に対する建物の分譲面積は、建物の躯体部分を除いた室内の正味面積として計算していることは認めるが、その余はすべて争う。
(証拠の関係)《略》


   【理   由】
 一、控訴人はAが建設したX1団地分譲住宅の買受人全員を組合員として組織せられ、その目的及び権限は建物の区分所有等に関する法律、組合規約及び建築協定に定められたところにより、分譲住宅の共有物を管理し、かつ共有物使用に伴う組合員の共同利益を維持するため必要な業務を行うものであることは当事者間に争いがな<、そのほか《証拠略》によると、控訴人は団地内の建物またはその敷地もしくは付属施設の管理または使用に関する組合員相互間の事項を処理執行するものであることが認められる。
 二、組合規約及び建築協定は昭和42年9月11日控訴人組合の創立総会において、被控訴人を含む出席者全員の一致により可決承認され、そのころ総会欠席者を含む控訴人組合員全員の書面による合意により設定されて発効したものであること当事者間に争なく、その成立の経緯、内容及び趣旨にかんがみれば、上規約及び協定は国法の範囲内において日本住地公団X1団地分譲住宅を買受けて団地住民となった現在及び将来の全員を拘束する自治規則というべきところ、上協定第11条第2号によると、組合員はその所有する住宅部分のバルコニーを改築することは禁止されていることは当事者間に争なく、《証拠略》によれば上違反に対しては理由のいかんを問わず一定の期間内に原形に復せしめられるべきこととされていることが明らかである。ところが被控訴人は別紙目録記載206号室の住宅部分を所有し控訴人組合の組合員となっている者であるが、昭和43年11月ころ同目録記載バルコニー南側の手すり用障壁を利用して、その上の空間部分に木製及びアルミサッシ製のわくを付設し、これにアルミサッシ製のガラス戸をはめ込んで窓を設け、この窓と上手すり用障壁が一体となって建物の外壁を構成するに至らせ、さらに上バルコニーと東側隣家のバルコニーとの堺の仕切板の左右のすき間をベニヤ板でふさぎ、その上部に回転窓を取りつけこれらによってバルコニーを外気と遮断された独立の部屋となし、その壁面と天井の全面に保温用発ぽうスチロールを張りつめて、これを温室として利用していることは当事者間に争いがない。
 三、そこで被控訴人のした上バルコニーについてした工作が、建築協定第11条第2号に違反するか否かについて検討する。組合規約第7条第2項第1号によると、共同住宅の建物の躯体部分は控訴人の管理する共有物と定められていること、そしてバルコニーに該当する部分の躯体が上規定にいう共同住宅の建物の躯体部分に含まれることは当事者間に争いがないので、バルコニーは控訴人の管理する共有物ということができ、しかも組合規約第8条、第10条によれば、共有物の改築は控訴人がその目的を達成するために行う業務に属することが明らかであるから、控訴人組合の組合員がバルコニーを自由に改築することは許されず、建築協定はこれが絶対的禁止を明定し、その違反に対しては理由のいかんを問わず原状に復せしめることとしているのである。本件において被控訴人のした上バルコニーの工作はそれ自体本件共同住宅におけるバルコニーの本来の形体を変えるものであって、その改築であることは否定し得ない。それ故すでにその限りにおいて、被控訴人のした上改築は上協定の禁止に違反し控訴人の要求により原形に復せしめられるべきものであることは明らかである。ただ、形式的に上規約や協定に違反する如きであっても実質的に、上禁止の目的を阻害しない場合は許されるとする説をなす者があるところ、かかる説は上改築を理由のいかんを問わず絶対的に禁止している上協定の趣旨に矛盾し、そもそも本件の如き共同住宅よりなる団地という部分的地域共同体の自治規則に対する理解を缺くきらいがあって、直ちに賛成しがたいものがあるけれども、被控訴人の所為はひっきょう上の説に出づるものと考えられるので、上の禁止の実質的理由及び被控訴人の改築が実質的にも上の禁止に触れるものであるか否かについて考究する。建築協定がバルコニーの改築を禁止するに至たる理由は、第一に組合員が自由にバルコニーを改造することになれば、建物全体ひいては団地全体の美観を害するからであること、第二に本件の住宅部分及びバルコニーはいずれも鉄筋コンクリート造りで、一定の限度以上の重量が加わると、バルコニーの存立に危険を及ぼすおそれがあるため、改築にともなう架重の変更を防止する必要があること、第三に各バルコニーは隣家のバルコニーと接続していて、その間の仕切板はある程度の力を加えると容易に突き破れる機造になっているので、相互に非常の際の避難路の効用を有し、これを勝手に改造すると、その効用をそこうおそれがあるためであること等が、《証拠略》によって認められる。それ故に本件建築協定はかかる実質的理由の検討の上に立ってバルコニーの改築はそれ自体として理由のいかんにかかわらず絶対的に禁止せられるべしとするものであることが理解せられるのである。
 ひるがえって本件につきみるに、《証拠略》をあわせると、次の事実が認められる。すなわち本件団地は各棟5階建合計9棟からなる団地であるところ、団地における建物の美観は建物ないし団地全体からみて均斉のとれた統一美(整一美)を必要とし、部分的にみて美しいものであっても、そこに統一がなくてはその目的を達することができず、従って仮に被控訴人のした本件バルコニーの改造が概観上体裁のよいアルミサッシ窓であったとしても、建物ないし団地全体からすると、他との調和を欠き美観をそこのうおそれがある。もともと建物ないし団地の美観はそこに住む組合員ひとりひとりが日常生活する上において審美的満足を得るという点で重要であるばかりでなく、統一美が保持されているか否かは建物の価値を維持存続させる点で経済的に多大の影響を及ぼすものであることを考えると、組合員全員のためその保持を図る必要があるものである。次に本件バルコニーとその東側隣家のバルコニーとの間の仕切板には厚さ3センチメートル程の発ぽうスチロール板がのり付けにより接着してあるが、これは上仕切板の構造を変えて非常の場合突き破ることを困難ならしめているものではないから、そのため本件バルコニーの隣家との間の避難路としての効用を害するものではないかの如く解されるけれども、バルコニーが密閉されると、中に何が置かれてあるか外部からはわからず、このことが隣家の居住者に心理的抵抗を与え、非常の場合の避難を困難ならしめる要素となることは否定できない。本件バルコニーに付設されたアルミサッシそのものは軽量のものであり、それにはめ込んだガラス戸を考慮にいれても、被控訴人のした改築により本件バルコニーに格別過大な重量を加え、そのためバルコニーの存立に危険を及ぼすほどのおそれはないにしても、本件バルコニーの改築によって、ガラス戸に付着したごみが流れて手すりの腰壁をよごしているほか、雨の吹きつける日には本来被控訴人方のベランダに吹き込んで、そこの排水口を通って流出すべき雨水がガラス戸を伝わって多量に落下し、階下の居住者に多大な迷惑をかけている事実がある。その上万一上階に非常事態が生じたとき上階の在住者が本件バルコニーによってその難をさけることをも妨げることにもなる。
 上認定を左右すべき証拠はない。
 以上の認定事実によって考えれば本件バルコニーの改築は建築協定が禁止する実質的理由に牴触するものであることは明らかである。《証拠略》によれば本件バルコニーに隣接してバルコニーを有する隣家B方では被控訴人の本件改築を承諾し、その万一の場合の不利益を受忍しているが如くであるが、そのことはせいぜい当面前記実質的理由の一小部分を解消せしめるに止まり、しかも上B方が将来いつまでも上隣家を所有するとは保しがたいところからすれば、たまたまその時の隣家が許容したからといってこれを別異に解さなければならない理由とはならない。
 《証拠略》によれば本件団地内に他にも種々バルコニーの上存在の趣旨を害する如き用法の事例の存することはこれをうかがい得るが、これらが改築といい得るか否はともかく、それ自体非難に値するものであって、もとより被控訴人の本件改築を是認せしめるべき資料とすべきものではない。これを要するに本件の如き集合住宅からなる団地においては、その自己の区分所有に属する住宅自体についても団地住民全体のためその完全な所有権行使は幾多の点において制約せられているのであり、(建物の区分所有等に関する法律第5条、建築協定第10条等参照)いわんや共有、共用部分については個人の自由はいちじるしく制限せられているのであって、かかる必要と現実の上に規定せられたのが本件規約であり、協定であるということができ、かかる自治規則の支配する部分的地域社会に自ら身を投じた以上は当然その拘束を受けるものであって、この拘束を受けないでかかる団地において生活することは許されないのである(もっともかくいえばとて、上規約や協定がその団地の共同生活の維持の必要を超えて過酷なものであり、究極において個人の基本的人権をそこなうものとされる場合には、その効力が否定されるべき場合なしとしないが、本件の場合かかる程度の規制は団地の共同生活という公共の福祉のためやむを得ない制限といわねばならない。従ってこの団地内の各人はその規則に矛盾しない限度で能う限りの自由を享受し得ることはいうまでもないことであり、これを本件の如きバルコニーについていえばバルコニーは組合が管理する共有物であるとしても、各組合員が所有する住宅部分に接続し、あたかもその延長であるかのごとき観を呈していることと、組合規約第18条が、バルコニーに土砂を搬入して花壇を造ること及びバルコニーの外壁面より外部に洗濯物を出すことを団地における共同生活の秩序を乱す行為として禁止していること等の趣旨に照すと、各組合員の所有する住宅部分に接続するバルコニーは、バルコニーのもつ前記の如き効用を害せず団地における共同生活の秩序を乱さない限度においては、上組合員がこれを自由に使用することができるものと解するのが相当であり、従ってバルコニーに物干しの設備をしたり、若干の植木鉢を並べたりする程度のことはさしつかえないものというべきであろう)。
 四、しからば被控訴人のしたバルコニーの改築工事は集合住宅からなる団地の自治規則たる建築協定に違反し、控訴人組合員の共同利益を侵害するものというべきことは明らかであるから、被控訴人は控訴人に対し上協定の定めるところにより控訴人の求めにより相当の期間内に被控訴人が上工事により加えた部分を撤去して復旧すべき義務があるものというべきところ、《証拠略》によれば、控訴人は被控訴人に対し昭和44年4月以来数度にわたり相当の期間を定めてその原状回復を求めたことが明らかであるから、被控訴人はすでに即時控訴人に対し上工作部分を撤去して原状に復旧すべき義務があること明らかである。また被控訴人が上のとおりの建築協定違反をあえてし、控訴人の数度にわたる請求を拒否し、本訴提起を余儀なからしめたことに照して考えれば、被控訴人は将来再びバルコニーを改築して、控訴人組合員の共同利益を侵害するおそれがあることは推察に難くないので、控訴人はあらかじめこれを防止する必要があるものというべきである。
 五、よってこれを求める控訴人の本訴請求はいずれも理由があるものとしてこれを認容し、これと異なる原判決を取り消し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第96条、第89条を仮執行の宣言について同法第196条を各適用して、主文のとおり判決する。
    東京高等裁判所第2民事部
      裁判長判事 浅沼 武
 判事岡本元夫同田畑常彦は転動につき署名捺印できない。
      裁判長判事 浅沼 武


別紙
     目   録
東京都○○区○○1丁目127番地所在
 X1団地9号棟の内2階206号室65.14平方メートルに付設されているバルコニー4.68平方メートル。但し上206号室の台所兼食事室兼居間の南側に接続するもの。





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