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マンション管理関係判例



bP8 管理費の負担割合/給排水管等の設備 


平成 5年 3月30日  判時1461-72  東京地判


判決要旨
エレベーター及び二階以上の区分所有者専用の給排水管について、二階以上の区分所有者の一部共用部分との主張を排斥した事例/分譲時一階部分の管理費が、二階以上の区分所有者に較べて面積あたりの金額が低額であった場合に、これを二階以上の額と同額に変更することは、法31条の「特別の影響を及ぼすべきとき」に当たらないとされた事例


判決日・当事者
管理費等請求事件、東京地裁平3(ワ)17250号、平5.3.30民4部判決、一部認容、一部棄却(控訴)
《当事者》
原  告 Xマンション管理組合
上代表者役員
     X2
同    X3
同    X4
上訴訟代理人弁護士
     藤 井   篤
被  告 Y1
上訴訟代理人弁護士
     大 場 勝 男


【主文】 一 被告は、原告に対し、金69万8,775円及び内金53万823円に対する平成4年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを4分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、仮に執行することができる。


【事実】 第一 当事者の求めた裁判
 一 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、別紙請求債権目録記載の金員を支払え。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。
 3 仮執行宣言
 二 請求の趣旨に対する答弁
 1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
 一 請求原因
 1 原告は、東京都○区《番地略》所在のXマンション(別紙物件目録二の「一棟の建物の表示」記載の建物。以下「本件建物」という。)の「建物の区分所有等に関する法律」(昭和37年法律第69号、昭和58年法律第51号、以下「法」という。)に基づく管理組合であり、権利能力なき社団である。
 2 被告は、別紙物件目録一記載の土地及び同目録二記載の建物を所有する本件マンションの区分所有者の1人である。
 3 被告は、昭和52年12月、前記別紙物件目録一記載の土地及び同目録二記載の建物を前所有者から売買によって取得したころから、同目録三の(一)及び(二)記載の各土地部分(同目録三の(一)記載の土地部分を以下「D部分」といい、同(二)記載の土地部分を以下「E部分」という。)を専用使用し、同目録四記載の土地(以下「F部分」という。)を占有し使用している。
 4 原告の管理規約では、昭和63年6月に全面的に改定されるまでは、管理費は、当月分を前月末日までに支払うこととされ、3か月以上遅滞した場合には、少なくとも各月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を付加して支払うこととされていた。
 原告の管理規約は、昭和63年6月に全面改定され、同年7月分からは、当月分を当月1日までに支払うこととされ、3か月以上遅滞した場合には、各月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を付加して支払うことは改定前の管理規約と同様である。
 5 原告は、昭和62年7月12日、定期総会において、本件マンションの各区分所有者が負担すべき管理費の額につき、それまで被告を除き1平方メートルあたり月額金271円とされ、被告については上の割合の金額ではなく月額金2万6,000円とされていたものを、全組合員(区分所有者)につき專有部分と専用使用部分1平方メートルあたり月額金204円にすることを決定した。これにより、被告が負担すべき管理費は、専有部分合計122.981平方メートル分の月額金2万5,080円(10円未満切捨て。以下同じ。)となった。
 6 原告は、昭和63年6月26日、定期総会において、管理費の額につき、専有部分と専用使用部分1平方メートルあたり月額金245円(20パーセント増額し、1円未満を四捨五入した金額)にすることを決定し、規約にも管理費の額を専有面積と専用使用面積に応じて定めることを明文化した。これにより、被告が負担すべき管理費は、専有部分合計122.981平方メートルと専用使用するD及びE部分合計16.295平方メートルの合計139.276平方メートル分の月額金3万4,120円となった。
 7 原告は、平成3年6月23日、定期総会において、管理費の額につき、専有部分と専用使用部分1平方メートルあたり月額金294円にすることを決定した。これにより、被告が負担すべき管理費は月額金4万940円となった。
 8 原告は、昭和63年6月26日、定期総会において、被告が歯科診療用の機器を置いて占有使用しているF部分につき、被告が使用することを認め、その使用料を月額金2万620円とし、1年分を前納すべきこと(したがって、毎年6月末日限り同年7月1日分から翌年6月30日までの使用料を支払うべきこと)を決定した。
 9 被告は、原告の上各決定にかかわらず、昭和62年7月分以降、管理費として月額金1万9,572円しか支払わず、かつ、前記F部分の使用料を支払わない。
 10 原告は、平成3年6月23日の定期総会で、被告を相手方として未払い管理費等の支払いを求める訴訟を提起することを決議し、原告代理人との間で被告に対する本件訴訟手続を委任し、弁護士費用(着手金及び報酬)として金25万円を支払う旨を約した。
 よって、原告は、被告に対し別紙債権目録記載の未払いの管理費及びそれに対する各遅延損害金、F部分の使用料並びに弁護士費用の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
 1 請求原因1の事実は不知。
 2 同2の事実は認める。ただし、別紙物件目録二記載の各建物の実際の床面積は否認する。
 3 同3の事実のうち、被告がD及びE部分を専用使用していることは認めるが、F部分を占有し使用していることは否認する。
 4 同4の事実のうち、改定前の管理規約では当月分の管理費を前月末日までに支払うこととされていたことは認め、改定された管理規約における管理費の支払時期の規定は否認し、その余は不知。
 5 同5の事実のうち、原告が、昭和62年7月12日の定期総会において、本件マンションの各区分所有者が負担すべき管理費の額を1平方メートルあたり月額金204円にすることを決定したことは認めるが、その余は否認する。
 6 同6の事実は否認する。
 7 同7の事実のうち、原告が、平成3年6月23日に定期総会を開催したことは認めるが、その余は不知。
 8 同8の事実は不知。
 9 同9の事実は認める。
 10 同10の事実は不知。
 三 抗弁
 1 (一部共用部分)
 本件マンションは、被告が所有する1階は店舗として、他の区分所有者が所有する2階ないし6階は住居として分譲されたものであり、1階部分と2階以上の部分は使用目的、利用状況を異にしている。そして、1階の店舗はいずれも直接公道から出入りすることが予定され、構造上エレベーターを利用することは予定されておらず、エレベーターは2階ないし6階の住居部分の区分所有者が使用する構造になっている。また、1階の店舗部分と2階ないし6階の住居部分は水道管の配管も異なり、2階以上の住居部分用の配管を1階の店舗が利用することは全くない。
 したがって、本件マンションのエレベーター及び2階ないし6階に通ずる給排水管は一部共用部分であり、その部分の管理費を被告が負担する必要はなく、被告は、その部分の管理費を支払う義務はない。
 2 (特別の影響)
本件マンションの管理費は、その50パーセント以上がエレベーター関係及び2階以上の水道関係に使用されており、そのため、本件マンションの各区分所有権を分譲したG不動産株式会社は、1階の店舗部分の管理費を面積による額に比して約25パーセント安くして分譲したものである。
 にもかかわらず、原告が総会で管理費を面積によって算出し、被告の負担する管理費を増額することは被告の権利に特別の影響を及ぼすものであるから、被告の承諾がないときは効力を有しない。
 3 原告が主張する総会決議の内容は、被告に関連する共用部分については被告の専用使用部分として被告にその部分の管理費の負担を求め、他方で、エレベーターや2階以上の部分の水道設備を全体共用部分として被告にもその管理費の負担を求めるものであり、著しく公平の原理に反するものであるから無効である。
 4 (弁済)
被告は、原告に対し、平成4年1月31日、昭和63年7月分以降の管理費の増額分(昭和63年7月分から平成3年6月分まで各月金3,915円、平成3年7月分から平成4年1月分まで各月金8,613円)と指定して金20万1,231円を支払った。
 5 (F部分について)
被告は、F部分につき、本件マンションを分譲したG不動産株式会社の了解を得て歯科診療用の機械を置いて使用している。
 また、F部分は、被告が従来から無償で使用してきた部分であり、被告にその使用料の支払義務を課する旨の決定は被告の権利に特別の影響を及ぼすものであるから、被告の承諾がないときは効力を有しない。
 四 抗弁に対する認否
 1 抗弁1(一部共用部分)の事実については次のとおりである。
 一部共用部分の範囲を解釈上無限定に広げると、各階の廊下も一部共用部分として他の区分所有者がその使用や管理に参加できなくなるなど極めて不都合が生じ、マンション全体の統一的な管理ができなくなる。したがって一部の区分所有者のみが他から独立して使用及び管理することが適当な場合や一部の区分所有者がその必要から築造した部分などに限って一部共用部分と認めるべきである。
 そして、原告では、その改正前及び改正後のいずれの規約でも、エレベーター及び給排水衛生設備、配管等を共用部分として明確に規定しており、また、エレベーターについては、1階の区分所有者も利用する可能性があり、構造上、機能上、明白に被告以外の区分所有者の用に供されるものということはできず、さらに、水道設備についても、被告専有部分の設備のみ本管から直接配管されていることは事実であるが、水道管は1階の共用部分であるエントランスの下に配管されており、その修理が必要となったときはこれを掘り起こす必要があるなど、専有部分以外の給排水設備はすべて本件建物の付属設備として構造上建物と一体となっており、修繕なども建物への影響なく独自に行うことは困難であり、これらの事実によれば、いずれも全体共用部分であることは明らかである。
 2 抗弁2の事実のうち本件マンションの管理費の50パーセント以上がエレベーター関係及び2階以上の水道関係に使用されているとの点は否認する。また、本件マンション分譲時の管理費の定め方は、1階部分が2階以上の部分と構造や面積が異なるにもかかわらず2階以上の区分所有部分の管理費をそのまま適用した杜撰なものであった。その余は争う。
 マンション等においては、棟により又は階により各区分所有部分の条件は異なっており、現実の管理費は、これらの個々の条件をある程度捨象して一律に面積比率で定められるのが一般である。本件の管理費に関する総会決議は法31条1項後段に該当しない。
 3 抗弁3は否認ないし争う。
 4 抗弁4の事実は認める。原告は、上金員を遅延損害金に充当し、さらに古い時期の管理費から順に充当する。
 5 抗弁5の事実は不知。その余の主張は争う。
第三 《証拠関係略》


【理由】 一 請求原因1の事実は《証拠略》によってこれを認めることができる。
 二 請求原因2の事実のうち、被告が別紙物件目録一記載の土地及び同目録二記載の建物を所有する区分所有者の1人であることは当事者間に争いがなく、上建物の実際の床面積(壁芯計算によるもの)については、《証拠略》によってこれを認めることができる。
 三 請求原因3の事実のうち、被告がD及びE部分を専用使用していることは当事者間に争いがなく、被告がF部分に歯科診療用の機械類を置いて上土地部分を占有し使用していることは《証拠略》によりこれを認めることができる。
 四 請求原因4の事実のうち、改定前の管理規約では当月分の管理費を前月末日までに支払うこととされていたことは当事者間に争いがなく、改定された管理規約における管理費の支払時期の規定が原告主張の内容であることは前記甲第1号証の二によってこれを認めることができる。
 五 請求原因5の事実のうち、原告が昭和62年7月12日の定期総会において、本件マンションの各区分所有者が負担すべき管理費の額を1平方メートルあたり月額金204円にすることを決定したことは当事者間に争いがなく、管理費の額が、それまで被告を除き1平方メートルあたり金271円であったこと、被告の管理費の額がそれまで金2万6,000円であったことは《証拠略》によってこれを認めることができる。なお、1平方メートルあたりの管理費の額金204円に被告の専有部分の面積を乗じた金額は金2万5,080円となる。
 六 請求原因6の事実は、《証拠略》により認めることができる。そして、1平方メートルあたりの管理費の額金245円に被告の専有部分及び専用使用部分(D及びE部分。以下同じ。)の面積を乗じた金額は金3万4,120円となる。
 七 請求原因7の事実のうち、原告が平成3年6月23日に定期総会を開催したことは当者者間に争いがなく、その余の点は《証拠略》によりこれを認めることができる。そして、1平方メートルあたりの管理費の額金294円に被告の専有部分及び専用使用部分の面積を乗じた金額は金4万940円となる。
 八 請求原因8の事実は《証拠略》によって認めることができる。
 九 請求原因9の事実は当事者間に争いがない。(但し、後記のとおり、被告は平成4年1月31日に管理費の増額分として金20万1,232円を支払った。)
 十 請求原因10の事実は《証拠略》により認めることができる。
 一一 抗弁1について判断する。
 1 《証拠略》を総合すれば、以下の事実が認められる。
 (一) 本件建物は、鉄骨造りの6階建ての建物であり、1階はエントランス、エレベーターホールのほか、建物の番号を101ないし103とする3戸の区分所有建物があり、2階ないし6階はいずれも各階4戸の居住用の区分所有建物となっている。上1階の3戸の区分所有建物は、分譲時にはいずれも店舗として分譲され、1階の3戸は、昭和51年4月19日に被告の兄Y2が購入し、昭和52年に被告が譲渡を受けて所有者となり、現在は被告が歯科医院等に使用している。
 本件建物にはエレベーターが1基設置されている。また、水道の給排水管は、1階部分と2階以上の部分とは別系統になっており、メーターも別になっている。
 (二) 原告組合では、前記認定のとおり管理規約を定めており、昭和63年6月の改定前の規約ではその第2条で共用部分の定めがなされており、共用のエレベーター、給排水衛生設備、水道設備及び専有部分内のものを除くその配管が共用部分である旨の規定がある。
 また、改定後の規約においてもその第6条及び別表1で、エレベーター設備、給水設備、排水設備、配線・配管等専有部分に属さない建物の付属物を共用部分と定めており、いずれも一部共用部分である旨の規定はない。なお、上規約の改定の手続は法の定める要件を充たす有効なものである。
 また、本件建物は、訴外G不動産株式会社が売主となって分譲したマンションであるが、前記のとおり被告の兄が1階の3戸を購入した際の売買契約に添付された管理規約(前記G不動産株式会社が管理者として作成し、被告の兄が区分所有者として押印したもの。)にも、前記改定前の規約とほぼ同様の規定がある。
 2 以上のとおり、エレベーター並びに給排水設備及びその配管は規約で共用部分と定められており、また、本件建物の構造や上設備の性質等に鑑みても一部共用部分と認めることはできない。確かに、1階の区分所有者である被告が本件建物のエレベーターを使用する程度は2階以上の区分所有者のそれに比較して極めて少ないことが推認されはするが、屋上の利用等のため使用する可能性が全くないとは言えず、また、給排水設備及びその配管についても、1階部分及び2階以上の部分とも本件建物と一体となった設備であり、その維持や補修に際しては本件建物の共用部分にも影響を及ぼすことなどに鑑みると、いずれも一部共用部分ということはできない。
 以上のとおり、抗弁1は理由がない。
 一二 抗弁2について判断する。
 1 本件建物の構造、エレベーターや水道の給排水設備及びその配管の状況は前記一一1(一)で認定のとおりであり、管理費の額及び算定方法の変遷、規約の改定並びに被告の管理費の支払状況は前記認定のとおりである。なお、昭和62年7月12日に、原告の定期総会(集会)で、管理費の額を面積に応じた額にすること及びそれに伴い被告が負担すべき管理費の額を変更せず、他の区分所有者が負担すべき金額を減額することを定めたことは、共有部分の管理に関する事項であって、法18条に基づく集会の決議事項である。
 被告は、前記認定の集会の決議及び規約の変更は被告に特別の影響を及ぼすから被告の承諾が必要であると主張するが、被告の承諾が必要とされるのは、規約の設定、変更又は廃止によって特別の影響を受ける場合(法31条後段)及び共用部分の変更、管理に関する集会の決議によって専有部分の使用に特別の影響を受ける場合(法17条2項、18条3項)に限定されており、集会決議については被告の承諾は必要とされていないから、結局、被告の承諾が必要であるのは、昭和63年になされた規約の変更が被告の権利に特別の影響を及ぼす場合であることになる。
 2 そこで、被告が負担すべき管理費につき、従前は専有部分及び専用使用部分の面積とは関係なく、2階以上の区分所有者に比べて面積当たりの金額が低額であったものを、面積あたりの金額を2階以上の区分所有者と同額とした金額に変更することが法第31条後段に規定する「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当するか否かにつき検討する。
 本件建物のような区分所有建物においては各区分所有者の利害は必ずしも一致せず、また、利益状況も各区分所有者ごとに異なっているのが通常である。しかしながら、共用部分につき各区分所有者が受ける利益の程度を管理費の額にすべて反映させることは不可能であり、また、相当であるともいえず、共用部分に対す各区分所有者の利害得失をある程度捨象し、一律に各区分所有者の専有部分及び専用使用部分の面積に応じて管理費を負担することは合理的な方法であるということができる(上を超えて、一部共用部分の管理費用を含めたすべての管理費用に充てるための管理費を全区分所有者に面積に応じて負担させることは合理性が否定される場合があるが、本件ではエレベーター設備や給排水設備等が一部共用部分といえないことは前記のとおりである。また、1階部分の給排水設備及びその配管を共用部分から除外し、2階以上の給排水設備及びその配管のみを共用部分と定めたとすれば公平を欠くが、本件においては、前記認定のとおり1階部分の給排水設備及びその配管も共用部分とされている。)。
 なお、前記のとおり、本件建物の分譲時に分譲会社が定めた管理費の額は、1階部分のみ面積に応じたものとなっておらず、減額されており、仮に、上減額の根拠がエレベーター使用の程度や水道配管の点にあったとしても、前掲甲第8号証によれば、その金額の定め方は単に1階の各区分所有建物の部屋番号に対応した2階以上の各区分所有建物の管理費の額と同額に定めたものに過ぎず、減額の程度には合理的な根拠はなかったことが認められる。
 以上の点にも鑑みると、従前、面積に比べて低額であった管理費を専有部分及び専用使用部分の面積に応じた金額に変更することは、被告には不利益な内容ではあるが、法31条後段に規定する「特別の影響を及ぼすべきとき」には該当しないというべきである。
 よって、抗弁2も理由がない。
 一三 抗弁3については、《証拠略》によれば、D部分は歩道沿いの幅約35センチメートルの植込みであり、その一部には被告の歯科医院の看板が設置されていること、昭和63年6月に管理費及び管理規約を改定した際、2階以上の各区分所有建物のベランダ部分(規約では共用部分とされている。)を専有面積に算入するとともにD部分を被告の専有面積に加えたこと、E部分は、現在は被告が独占的に使用しており、他の区分所有者は事実上使用できない状態であることが認められ、これらの事情に前記認定の各事実を併せ考慮すれば、原告がなした管理費に関する各決定、規約の改定は公平に反するものとは認められない。
 よって、抗弁3も理由がない。
 一四 抗弁4の事実は当事者間に争いがない。なお、被告は、管理費の一部として支払った金員につき充当を指定しているが、民法491条の規定に反する充当の指定は効力がないから、被告が支払った金員については民法491条の規定によって充当されることになる。したがって、別紙請求債権目録の各金額欄記載の金員につき同目録の遅延損害金の始期欄記載の年月日から支払いがなされた平成4年1月30日までの各遅延損害金(その金額は別紙計算書のとおり。)にまず充当され、その余の金員を弁済期の早い管理費の請求債権(別紙請求債権目録の番号順によることになる。)に順次充当することになる。その結果、別紙請求債権目録記載の金員中、遅延損害金の全部及び昭和63年8月分まで管理費並びに昭和63年9月分の管理費のうち6,545円に充当されることになる。
 抗弁4は上の限度で理由がある。
 一五 抗弁5について判断する。
 1 弁論の全趣旨によれば、F部分は本件建物敷地の一部であり、本件建物の各区分所有者の共有のかかるものであるから、分譲者であるG不動産株式会社が使用を許諾しても現在の各区分所有者との関係で効力を有するものではない。
 2 被告の承諾が必要であるのは、規約の改正により特別の影響を受ける場合又は共有部分の変更、管理に関する集会決議によって専有部分の使用に特別の影響を受ける場合に限定されていることは前記のとおりであり、F部分に関する原告の集会決議はこれに該当しないから、被告の主張は理由がない。(なお付言するに、F部分は本件建物敷地の一部であり、被告が当然に専有使用し得る権利を有するものではなく、区分所有者の集会の決議又は規約によらなければこれを使用することはできないと解され、前記認定の分譲の際に添付された管理規約及び改定前の管理規約の第6条1項でも、共有の敷地のうち特定の箇所については一部の区分所有者に専用使用させることができる旨規定されているところ、弁論の全趣旨によれば、被告は、F部分を従前、歯科医院用の機器の置き場として事実上無償で使用してきたことは認められるけれども、それが集会の決議や規約によって認められたものであることを認めるに足りる証拠はなく、仮に、上集会の決議に法31条後段の適用があるとしても、F部分の面積に応じて管理費に準じた金額の使用料を被告に課する旨の集会の決議は、被告の権利に特別の影響を及ぼすものということはできない。)
 よって、抗弁5はいずれも理由がない。
 一六 弁護士費用の請求について判断するに、《証拠略》によれば請求原因10の事実は認められるが、民法419条によれば金銭を目的とする債務の不履行による損害の額は法律に別段の定めがある場合を除き、約定又は法定の利率による損害に限り賠償を請求しうるものと解すべきであり、債務者に対し弁護士費用を請求することはできないと解するのが相当である(なお、付言するに、被告が本件について不当に応訴したといえる場合にはそれ自体が不法行為を構成し、不法行為による損害賠償として弁護士費用を請求しうる余地はあるが、本件では不法行為が成立するということはできない。)。
 一七 以上のとおり、原告の請求は、別紙請求債権目録記載の金員のうち、昭和63年9月分の管理費中金8003円及び昭和63年10月分から平成3年12月分までの管理費合計金60万8,292円並びに内金53万823円(原告が遅延損害金を請求する平成3年8月までの管理費の合計額)に対する平成4年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金と別紙物件目録四記載の土地の使用料合計金8万2,480円の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法89条、92条を、仮執行宣言につき同法196条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 金村敏彦)


別紙 物件目録
一(一) 所  在 東京都《番地略》
    地  番 《略》
    地  目 宅地
    地  積 81.55平方メートル
    共有持分 74839分の11420
         ○
(二) 所  在 東京都○区《番地略》
   地  番 《略》
   地  目 宅地
   地  積 34.54平方メートル
   共有持分 74839分の11420
         ○
(三) 所  在 東京都○区《番地略》
   地  番 《略》
   地  目 宅地
   地  積 130.67平方メートル
   共有持分 74839分の11420
         ○
二(一棟の建物の表示)
所  在 東京都○区《番地略》
構  造 鉄骨造陸屋根6階建
床面積 1階 172.30平方メートル
    2階 159.60平方メートル
    3階 159.60平方メートル
    4階 159.60平方メートル
    5階 159.60平方メートル
    6階 159.60平方メートル
(専有部分の表示)
 (一) 家屋番号 《略》
    建物の番号 《略》
    種  類 店舗
    構  造 鉄骨造1階建
    床面積  1階部分 44.41平方メートル
(壁芯計算による実際の床面積46.476平方メートル)
(別紙図面Aの部分)
 (二) 家屋番号 《略》
    建物の番号 《略》
    種  類 店舗
    構  造 鉄骨造1階建
    床面積  1階部分 14.22平方メートル
(壁芯計算による実際の床面積15.725平方メートル)
(別紙図面Bの部分)
(三) 家屋番号 《略》
   建物の番号 《略》
   種  類 店舗
   構  造 鉄骨造1階建
   床面積  1階部分 55.57平方メートル
(壁芯計算による実際の床面積60.78平方メートル)
(別紙図面Cの部分)
三(一) 一の(一)ないし(三)記載の土地のうち別紙図面D記載の部分約2.975平方メートル
 (二) 一の(一)ないし(三)記載の土地のうち別紙図面E記載の部分灼13.32平方メートル
四 一の(一)ないし(三)記載の土地のうち別紙図面F記載の部分約7.02平方メートル
別紙 請求債権目録《略》
   遅延損害金計算書《略》

別紙図面〈別添画像〉





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