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建築関係最高裁 判例その3

H11.11.09 第三小法廷・判決 平成9(オ)873
  土地境界確定請求事件



判例 H11.11.09 第三小法廷・判決 平成9(オ)873 土地境界確定請求事件(第53巻8号1421頁)


判示事項:

土地の共有者のうちに境界確定の訴えを提起することに同調しない者がいる場合にその余の共有者が右の者を被告にして右の訴えを提起することの許否


要旨:

土地の共有者のうちに境界確定の訴えを提起することに同調しない者がいる場合には、その余の共有者は、隣接する土地の所有者と訴えを提起することに同調しない者とを被告にして右の訴えを提起することができる。
(補足意見がある。)


参照・法条:
  民法251条,民訴法40条,民訴法第1編第3章当事者,民訴法第2編第1章訴え


内容:
 件名  土地境界確定請求事件 (最高裁判所 平成9(オ)873 第三小法廷・判決 棄却)
 原審  H09.02.13 大阪高等裁判所 (平成5(ネ)3295)



主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。


理    由

 上告代理人森脇勝、同河村吉晃、同今村隆、同植垣勝裕、同小沢満寿男、同岩松浩之、同田中泰彦、同山本了三、同麦谷卓也の上告理由について

 一 原審の適法に確定した事実関係は、(1) Bの相続人である被上告人らは、第一審判決別紙物件目録記載(1)の土地(以下「本件土地」という。)を持分各四分の一ずつの割合で相続した、(2) 本件土地は、その北側が上告人所有の道路敷(以下「本件道路敷」という。)に、南側が同人所有の河川敷(以下「本件河川敷」という。)に、それぞれ隣接している(以下、本件道路敷及び本件河川敷を併せて「上告人所有地」という。)、(3) 被上告人らの間においてBの遺産の分割について協議が調わず、被上告人Cを除く同Aら三名(以下「被上告人Aら」という。)が同Cを相手方として申し立てた遺産分割の審判が京都家庭裁判所に係属しているところ、本件土地と上告人所有地との境界が確定していないために右手続が進行しないで
いる、(4) 被上告人Aらは、本件土地と上告人所有地との境界を確定するために、被上告人Cと共同して、上告人を被告として境界確定の訴えを提起しようとしたが、被上告人Cがこれに同調しなかったことから、同人及び上告人を被告として、本件境界確定の訴えを提起した、というものである。

 二 第一審は、本件土地と本件道路敷との境界は第一審判決別紙図面記載イ、ロ、ハ、ニの各点を結ぶ直線であり、本件土地と本件河川敷との境界は同図面記載ホ、ヘ、トの各点を結ぶ直線であると確定した。上告人は、被上告人Aらを被控訴人として控訴を提起し、原審において、土地の共有者が隣接する土地との境界の確定を求める訴えは共有者全員が原告となって提起すべきものであると主張し、本件訴えの却下を求めた。原審は、本件訴えを適法なものであるとし、被上告人Cも被控訴人の地位に立つとした上で、被上告人Aらと上告人との間及び被上告人Aらと同Cとの間で、それぞれ第一審と同一の境界を確定した。

 三 境界の確定を求める訴えは、隣接する土地の一方又は双方が数名の共有に属する場合には、共有者全員が共同してのみ訴え、又は訴えられることを要する固有必要的共同訴訟と解される(最高裁昭和四四年(オ)第二七九号同四六年一二月九日第一小法廷判決・民集二五巻九号一四五七頁参照)。したがって、共有者が右の訴えを提起するには、本来、その全員が原告となって訴えを提起すべきものであるということができる。しかし、【要旨】共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいるときには、その余の共有者は、隣接する土地の所有者と共に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができるものと解するのが相当である。
 けだし、境界確定の訴えは、所有権の目的となるべき公簿上特定の地番により表示される相隣接する土地の境界に争いがある場合に、裁判によってその境界を定めることを求める訴えであって、所有権の目的となる土地の範囲を確定するものとして共有地については共有者全員につき判決の効力を及ぼすべきものであるから、右共有者は、共通の利益を有する者として共同して訴え、又は訴えられることが必要となる。しかし、共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいる場合であっても、隣接する土地との境界に争いがあるときにはこれを確定する必要があることを否定することはできないところ、右の訴えにおいては、裁判所は、当事者の主張に拘束されないで、自らその正当と認めるところに従って境界を定めるべきであって、当事者の主張しない境界線を確定しても民訴法二四六条の規定に違反するものではないのである(最高裁昭和三七年(オ)第九三八号同三八年一〇月一五日第三小法廷判決・民集一七巻九号一二二〇頁参照)。このような右の訴えの特質に照らせば、共有者全員が必ず共同歩調をとることを要するとまで解する必要はなく、共有者の全員が原告又は被告いずれかの立場で当事者として訴訟に関与していれば足りると解すべきであり、このように解しても訴訟手続に支障を来すこともないからである。
 そして、共有者が原告と被告とに分かれることになった場合には、この共有者間には公簿上特定の地番により表示されている共有地の範囲に関する対立があるというべきであるとともに、隣地の所有者は、相隣接する土地の境界をめぐって、右共有者全員と対立関係にあるから、隣地の所有者が共有者のうちの原告となっている者のみを相手方として上訴した場合には、民訴法四七条四項を類推して、同法四〇条二項の準用により、この上訴の提起は、共有者のうちの被告となっている者に対しても効力を生じ、右の者は、被上訴人としての地位に立つものと解するのが相当である。
 右に説示したところによれば、本件訴えを適法なものであるとし、被上告人Cも被控訴人の地位に立つとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の各判例のうち、最高裁昭和三九年(オ)第七九七号同四二年九月二七日大法廷判決・民集二一巻七号一九二五頁は、本件と事案を異にし適切でなく、その余の各判例は、所論の趣旨を判示したものとはいえない。論旨は、右と異なる見解に立って原判決を非難するものであって、採用することができない。なお、原審は、主文三項の1において被上告人Aらと上告人との間で、同項の2において被上告人Aらと同Cとの間で、それぞれ本件土地と上告人所有地との境界を前記のとおり確定すると表示したが、共有者が原告と被告とに分かれることになった場合においても、境界は、右の訴えに関与した当事者全員の間で合一に確定されるものであるから、本件においては、本件土地と上告人所有地との境界を確定する旨を一つの主文で表示すれば足りるものであったというべきである。
 よって、裁判官千種秀夫の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 裁判官千種秀夫の補足意見は、次のとおりである。
 私は、境界確定の訴えにおいて、共有者の一部の者が原告として訴えを提起することに同調しない場合、この者を本来の被告と共に被告として訴えを提起することができるとする法廷意見の結論に賛成するものであるが、これは、飽くまで、境界確定の訴えの特殊性に由来する便法であって、右の者に独立した被告適格を与えるものではなく、他の必要的共同訴訟に直ちに類推適用し得るものでないことを一言付言しておきたい。
 すなわち、判示引用の最高裁判例の判示するとおり、土地の境界は、土地の所有権と密接な関係を有するものであり、かつ、隣接する土地の所有者全員について合一に確定すべきものであるから、境界の確定を求める訴えは、隣接する土地の一方又は双方が数名の共有に属する場合には、共有者全員が共同してのみ訴え、又は訴えられるのが原則である。したがって、共有者の一人が原告として訴えを提起することに同調しないからといって、その者が右の意味で被告となるべき者と同じ立場で訴えられるべき理由はない。もし、当事者に加える必要があれば、原告の一員として訴訟に引き込む途を考えることが筋であり、また、自ら原告となることを肯じない場合、参加人又は訴訟被告知者として、訴訟に参加し、あるいはその判決の効力を及ぼす途を検討すべきであろう。事実、共有者間に隣地との境界について見解が一致せず、あるいは隣地所有者との争いを好まぬ者が居たからといって、他の共有者らがその者のみを相手に訴えを起こし得るものではなく、その意味では、その者は、他の共有者らの提起する境界確定の訴えについては、当然には被告適格を有しないのである。したがって、仮に判示のとおり便宜その者を被告として訴訟に関与させたとしても、その者が、訴訟の過程で、原告となった他の共有者の死亡等によりその原告たる地位を承継すれば、当初被告であった者が原告の地位も承継することになるであろうし、判決の結果、双方が控訴し、当の被告がいずれにも同調しない場合、双方の被控訴人として取り扱うのかといった問題も生じないわけではない。かように、そのような非同調者は、これを被告とするといっても、隣地所有者とは立場が異なり、原審が「二次被告」と称したように特別な立場にある者として理解せざるを得ない。にもかかわらず、これを被告として取り扱うことを是とするのは、判示もいうとおり、境界確定の訴えが本質的には非訟事件であって、訴訟に関与していれば、その申立てや主張に拘らず、裁判所が判断を下しうるという訴えの性格によるものだからである。しかしながら、当事者適格は実体法上の権利関係と密接な関係を有するものであるから、本件の解釈・取扱いを他の必要的共同訴訟にどこまで類推できるのかには問題もあり、今後、立法的解決を含めて検討を要するところである。
 以上、判示の結論は、この種事案に限り便法として許容されるべきものであると考える。
(裁判長裁判官 元原利文 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道)






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